授業・履修情報

2013年度シラバス

大学経営論

 

開講予定 夏学期 
担当教員 両角 亜希子
授業の目的・ねらい

 大学経営論は大学経営について基本的な知識を習得するとともに、その現代的な課題について各自の問題意識を発展させることを目的とする。

 初回の授業で解説するが、教育力の向上や国際化などの大学改革を進めるためには、大学のガバナンスを変革することが必要だという議論が20年ほど続いている。学長のリーダーシップ強化(1995年中教審答申)、国立大学の法人化(2004年)、理事会の機能強化(2004年私学法改正)等の政策も実行されてきたものの、期待されるような大学改革の成果に結び付かず、長年、同じような議論が繰り返されている。なぜ大学ガバナンス改革はうまくいかないのか。全学的な大学改革を進めるために本当に必要なポイントは何なのか。こうした問いについての問題意識と考察を深めるのが今回の授業の目的である。

 授業の前半では、現在の日本の大学のガバナンスの基本構造、課題についての理解を深める。後半ではこうした分野の研究が最も盛んであるアメリカについて学びながら、日本の大学に対するインプリケーションを学ぶ。大学のガバナンス改革の議論で抜け落ちている重要な点は、大学組織の力学、とくに教員の行動様式、関与のあり方ではないかと考えられる。こうした点に着目し、古典ともいえるような基本的な文献を演習形式で読みこみ、議論をすることで、上記の問いに対する各自の答えを見つけてもらいたい。

 内容・文献

 回 

       内容
 1

ガイダンス、授業の進め方、担当者決定、イントロ

 2
私立大学のガバナンスの基本構造を理解する
 
1.両角亜希子(2010)『私立大学の経営と拡大・再編-1980年代後半以降の動態』東信堂「第1章 日本の私立大学の制度的枠組み」(41-82頁)
2.経済同友会(2012)「私立大学におけるガバナンス改革―高等教育の質の向上を目指して-」
3.両角亜希子(2013)「私立大学の自主性と公共性-日韓の私立学校法の比較から」『大学論集』第44週、179-194

4.大﨑仁(2012)「大学のガバナンスとは」『現代の高等教育』No.545201211月号)(4-12頁)

 

 3
国立大学の法人化の意味を理解する
 
1.江原武一(2010)『転換期日本の大学改革-アメリカとの比較』東信堂より、「第7章 管理運営の改革」(190-239頁)
2.金子元久(2005)「国立大学法人化の射程」江原武一・杉本均編『大学の管理運営改革-日本の行方と諸外国の動向』東信堂(47-71頁)
3.天野郁夫(2006)『大学改革の社会学』玉川大学出版部より、「第9章 国立大学の法人化」「第10章 法人化の現実と課題」(102-124頁)

4.IDE大学協会『現代の高等教育』No.511(国立大学法人-二期目への展望)(20096月号)(1-69頁)

 

 4
大学の自治について歴史的な知識を深める
 
下記の文献を読み、感想をA4で1枚にまとめる。

寺崎昌男(1998)『大学の自己変革とオートノミー』東信堂より、「Ⅳ 政府と大学自治」(167-246頁)

 

 5
アメリカの大学についての基礎的な知識を得る
 

1.中山茂(1988)『アメリカ 大学への旅-その歴史と現状』リクルート出版より、「1.大学の表通り-歴史を追って」(9-109頁)

2.谷聖美(2006)『アメリカの大学-ガヴァナンスから教育現場まで』ミネルヴァ書房より、「第1章 アメリカの大学、その概要」「第2章 大学の組織と財政」「第3章 教員組織と人事システム、および教員の職務」(1-94頁)

 

 6
特別講演「韓国の大学におけるガバナンスの変容(仮)」ソウル大学教育学部 シン・ジョンチョル准教授
 
事前に読むこと

Jung Cheol Shin(2011) “South Korea: Decentralized Centralization-Fading Shared Governance and Rising Managerialism” in W. Locke et al.(eds) Changing Governance and Management in Higher Education,Springer

 

 7
アメリカの大学のガバナンス構造について理解する
 

1.AAUP/ACE/AGB(1966)Statement on  Governance of Colleges and Univerisities

2.中山茂(1988)『アメリカ 大学への旅-その歴史と現状』リクルート出版より、「大学の役者たち」(110-124頁)

3.両角亜希子「私立大学の経営戦略③:アメリカの大学の戦略的計画」社団法人私学経営研究会『私学経営』20113月 No.43359-69

4.全米大学理事会協会の出している理事向けのマニュアルのうち、下記4点(①②は州立か私立かの違いで、内容は重なる部分が多い)。いずれも20頁程度。

Trustee Responsibilities- A Basic Guide for Governing Boards of Independent Institutions

Trustee Responsibilities- A Basic Guide for Governing Boards of Public Institutions

The Board’s Responsibilities for Academic Affairs

   ④Essentials of Presidential Search

 

 8・  9・10
大学組織論:大学がどのように動いているのか、モデルから考えてみる
 

ロバート・バーンバウム1992『大学経営とリーダーシップ』玉川大学出版部

翻訳元の本はHow Colleges Works(1988)

初回:1-4章、二回目:5-9章、三回目:モデルを自大学にあてはめて考えてみる(宿題&グループディスカッション)

 

11・12
アメリカの大学改革について考える
 
J.B.L.ヘファリン(1987)『大学教育改革のダイナミックス』玉川大学出版部

翻訳元の本はDynamics of Academic Reform(1969)

初回は1-3章、二回目は4-6章

 

 13
アメリカの大学の共同統治について考える

Kenneth P. Mortimer&Colleen O’Brien Sathre(2007)The Art and Politics of Academic Governance, ACE13

 

 14

特別講演「歴史的観点からみた大学ガバナンス(仮)」天野郁夫東京大学名誉教授

 

 15
最終レポート提出

日本の大学を1校とりあげて、あなたが考える問題点を指摘し、今学期の授業で扱ったアメリカの大学の組織・経営の研究から何が学べたかを論じなさい。

分量は、A445枚程度。

 

 

授業の進め方

 ・レポーター2名は担当した文献について、①そのエッセンス、および担当した文献  についてのコメント・議論のポイントを各自4-5枚程度に簡潔にまとめてくる。レポー  トは授業の50分間程度を使い、発表してもらう。(全員の理解確認)

・コメント1名は、指定文献について、議論したいポイントをA4で1-2枚に簡潔にま  とめる。もし議論のポイントがうまく見つからない場合は、その文献のテーマに関連  した論文などを紹介してもよい(分量は同じくA4で1-2枚程度)。

成績評価

  授業の中での発表(4割)、討議への参加(授業への貢献)(3割)、宿題・最終レポート(4割)をおおよその目安に総合的に評価する。