授業・履修情報

2014年度シラバス

比較大学論

   

授業科目 比較大学論 

開講予定

 冬学期 土曜5限

担当教員 福留 東土
授業の目的

 大学を比較と歴史の視点から探究することにより、大学に対する複眼的かつ幅広い視野を獲得することを目標とする。主にアメリカの大学を対象に講義を行うが、アメリカの大学に関する知識を習得することが目的ではなく、比較史的考察を通して、各人が「大学とは何か」に関して思考を深めることを重視する。

授業の進め方

1.         講義形式を主とする。課題は以下の3つとする。

2.         事前課題:授業に先立ち、指定された論文を読んでくること。

3.         小レポート:第5回(11/1)から第12回(1/24)のいずれか3、授業を聞いて考えたことや質問を翌週木曜までにA4・2枚程度の小レポートにまとめ、メール添付で送付すること。優れたコメント、質問は授業の中で取り上げる。

4.         期末レポート:以下のどちらかで期末レポートを作成すること。

①海外の個別大学をひとつ取り上げ、その歴史について論じる。テーマは自由(創設時の歴史、何らかの歴史的画期、通史など)。対象大学はアメリカに限らない。
②特定のテーマを立てて、比較または歴史の観点からそのテーマについて論じる。レポートの中間発表を、第5回~第13回の授業中に設ける(質疑応答含め一人15分程度)。レポートの対象大学・テーマと希望する発表日をメールで提出すること(形式自由)。対象大学・テーマについて調整を行うことがある。必要に応じて事前に相談すること。
授業のスケジュールとテーマ  
1回:104日  大学の比較・歴史研究
・授業の趣旨・内容の説明
・講師の経歴・研究紹介
・大学の比較・歴史研究―意義・特質・現状・課題・展望
 
2回:1011日  アメリカの大学システム
・事前課題:アメリカの大学システムを特徴付けるものは何か?
・アメリカの大学システムの概要:大学を取り巻く支援・管理・規制の構造
・大学システムの重層性と複雑性
  
3回:1018日 アメリカの大学―機関の基本構造
・アメリカ大学の機関類型―多様性
・高等教育機関の管理運営の構造
 
1021日(火) 期末レポートテーマ提出期限
 
4回:1025日 課題研究
・比較研究への視野の醸成
・高等教育の具体的課題を取り上げて「比較研究とは何か」について考察を深める。
・課題として、学士課程教育、大学院教育、大学ガバナンスを取り上げる。
 
5回:111日 大学の起源としてのヨーロッパ
・アメリカ大学の起源となった中世・近世のヨーロッパの大学の発展の概要について理解する。
・ヨーロッパで形成された大学概念
・アメリカにとってのヨーロッパの知的・文化的遺産とは何か?
受講生による発表1
 
 6回:118日 植民地カレッジからダートマス事件へ
・植民地カレッジの目的、管理形態、植民地政府との関係
・大学を所有・管理するのは誰か?
・「公立」「私立」の概念形成
受講生による発表2
 
 7回:1115日 カレッジの教育―「イェールレポート」と専門職教育
・カレッジ時代を特徴付ける古典教育の特質
・古典教育の意義を主張した「イェールレポート」で何が論じられたのか?
・もうひとつのカレッジ教育の伝統としての専門職教育
受講生による発表3
 
8回:1122 宗教と科学
・古典的カレッジを特徴付けるキリスト教・教派による影響とはどのようなものだったのか?
・科学の発展による宗教的信仰の動揺:宗教と科学の対立と宥和
・宗教との対比を通してみる大学の学術と科学とは?
受講生による発表4
 
休講:1129
 
9回:126日 実務的教育と大学―国有地付与大学(ランドグラント・カレッジ)の成立と展開
・農業・工業の発展による社会変化と大学教育への需要の変化
・連邦政府・州政府による財政的支援と大学教育の関係
・ランドグラント・カレッジのタイポロジーと多様性
・近代社会の成立と大学への実学の導入過程
受講生による発表5
 
10回:1213日 研究大学の建設―研究と大学院教育
・研究に基づく新たな大学像の現出―大学にとって研究・研究者養成とは何か?
・ドイツモデルの影響とジョンズホプキンズ大学
・シカゴ大学の出現
・既存大学へのインパクトとユニバーシティへの変容
受講生による発表6
 
11回:110日 拡大と多様化・競争・協調・標準化―19世紀末から20世紀前半の大学
・大学の拡大と多様化・階層化の実態とその影響
・大学教育の標準化への動き―中等教育との接続、アクレディテーションの出現、財団の影響力
・競争と協調―協調の場としての大学団体とそれを通した差別化・階層化
受講生による発表7
 
12回:12420世紀の大学とリベラル・エデュケーション
・連邦政府による財政支援の強化と統制
・大学教育機会の拡大と大衆化
・学生運動と大学の民主化
・戦争と大学教育
・多文化主義・平等と大学
受講生による発表8
 
13回:131日 受講生による発表915
 
2月上旬 期末レポート提出 …提出日は追って指示する
成績評価
期末レポート 50%(中間発表は成績評価の対象とはしない)
授業後の小レポート 30%
授業への貢献・報告 20%
参考文献

Philip G. Altbach, Patricia G. Gumport & Robert O. Berdahl (Eds.), American Higher Education in the Twenty-first Century: Social, Political and Economic Challenges (Third Edition), (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2011).

・ 潮木守一『アメリカの大学』講談社学術文庫、1993年。

・ 中山茂『大学とアメリカ社会―日本人の視点から』朝日選書、1994年。

・ フレデリック・ルドルフ『アメリカ大学史』玉川大学出版部、2003年。

・ リチャード・ホフスタッター&ウォルター・メツガー『学問の自由の歴史Ⅰ・Ⅱ』東京大学出版会、1980年。

 他、授業中に適宜提示する。