授業・履修情報

2016年度シラバス

高等教育論

  

授業科目

高等教育論

開講予定

S1S2 土曜

担当教員

小方 直幸

授業の目的・

授業計画

授業の目的:
この授業は、勤務校や他の大学で起こっている取組や改革を、さらに進める、ないし批判的に再考する際に寄与し得る、大学(改革)を論じる上で核となる論理(引き出し)を身につけることを目的とします。大学が進む方向の提示や課題解決策ではなく、大学とは何かを徹底的に考えてもらい、大学に関わって、自分がやっていることの意味や意義を再考する契機としてください。授業で扱う資料は、少数の資料を精読する方向と、多くの資料を多読する方向とが想定されますが、この授業では後者、つまりここ150年くらいの議論を多読することで、大学を論じる(=自身の業務を再考する)際の軸を複数修得してもらいます。
 
資料と読み方:
読む基礎資料は毎年同様ですが、数冊入れ替えています。資料は毎回TAから送付してもらいます。事前に該当箇所を読んできてください。それを前提に授業を行います。資料内容の確認は授業で行いますが、自身の読みとその際に考えたことを重視するため、こちらからレジュメの配布等は行いません。自分にとって重要と思われることがあれば、各自ノートテイクをしてください。ただしノートテイクが目的ではありません。授業に臨む際には、当該資料に書かれていることが、勤務校等の大学でも確認されるか否か、その理由は何か、を常に考えてください。この点については毎回授業で確認する予定ですが、授業での学びと勤務校での業務等との関係に対する気づきのメモが積算していくように取り組んでください。それを実行するには、目の前の業務等から視野を広げ大学全体で起こっていることの考慮や、教職員や学生など構成員との対話を通じた認識が不可欠です。
 

 各回の流れ:(途中で変更になる可能性があります)

 
4/9 学ぶ意図の明確化
・①受講者の考える大学像の提示、②その大学像が形成された文脈の自覚、③上記について受講生との異同の確認、を行ってもらい、次週以降の授業の準備を行います。
 
4/16  19世紀の大学論:ニューマン1983『大学で何を学ぶか』大修館①
  ・教養教育とは何か、1850年代の大学論の原典を通して、知と知の関係、有用とは何かについて考えます。
4/23  19世紀の大学論:ニューマン1983『大学で何を学ぶか』大修館②
 
4/30  フンボルト的大学とは:潮木守一2008『フンボルト理念の終焉?』東信堂
  ・大学のコアが研究活動にあることのコアとなったと目されるフンボルト理念。その実態を学ぶと同時に、フンボルト理念の現代的意味を考えます。
 
5/7  20世紀初頭の大学論:オルテガ1996『大学の使命』玉川大学出版部
  ・大学で教えるということはどういう意味で、いかなる工夫が必要であるのか、教育と研究の関係をどう捉えればよいのか、フレクスナーとほぼ同時期に書かれたが、その方向性は異なる大学論を学びます。
 
5/21  20世紀の大学論:ヤスパース1999『大学の理念』理想社
・オルテガにやや遅れて第二次世界大戦直後の1952年に展開されたドイツの哲学者による大学の理念論を学ぶ。
 
5/28  20世紀初頭の大学論:フレクスナー2005『大学論-アメリカ・イギリス・ドイツ』玉川大学出版部
・アメリカの医学教育に大きな影響を与えたフレクスナーが1930年に展開した科学・研究重視の大学論を学びます。
 
6/4 現代の大学論:ペリカン1996『大学とは何か』法政大学出版局①
・イェール大学創立300年記念行事に行った連続講義に端を発して書いたニューマン(後出)の現代的再考による大学論を学びます。
 
6/11 現代の大学論:ペリカン1996『大学とは何か』法政大学出版局②
 
6/18 現代の大学論:レディングズ2000『廃墟の中の大学』法制大学出版局①

  ・文化との結びつきを喪失した理念なき大学をエクセレンスとして論じることは可能なのか、従来とは一線を画する教育論や不同意の共同体としての大学論から考えます。 

7/2 現代の大学論:レディングズ2000『廃墟の中の大学』法制大学出版②  
 
7/9 学長の大学論:ボック2015『アメリカの高等教育』玉川大学出版部①
  ・大学は多額・多様な資金を必要とする一方、それは大学としての価値を犠牲に行われていないか、事態を反省的に顧みた『商業化する大学』に次いで書かれた、学士課程教育の重要性をコアに置きつつ、大学の現状と課題を幅広く論じた著書を読み説きます。学長論(学長として知り考えてもらいたい)としても読んでもらえればと思います。
 
7/16 学長の大学論:ボック2015『アメリカの高等教育』玉川大学出版部②

※授業後、最終レポートを執筆(〆切は7月末日)

成績評価

 

初回に書いたレポートが、13回の授業を通じてどう変化するかを、最終レポートで確認し、成績をつけます。皆さんの最終レポートの内容は一様ではありませんし、書かれた内容について一定の到達水準を設けているわけでもありませんが、授業修了時の自分の考え方が、学んだ素材を活用しながら説得的に展開できていることが重要です。最初に書いたレポートと最終レポートとの異同が、自身でも確認可能な学びの成果となります。