スタッフ紹介

小方教授

インタビュー

私のキャリア

私が大学を出たのは、いわゆるバブル経済の終わり頃でした。教育学部であっても、周囲はいわゆる"優良企業"に就職していく人が多かったと記憶しています。しかし私自身は就職に対して確たるものがなく、なんとなく大学院に進学しました。当時は、大学院まで進むと一般企業への就職も難しく、結果として博士課程に進学して研究者への道を歩むしかない――そんな消去法的な経緯でこの世界に入ったのです。ですから、今の私に「適職感」はありません。折に触れて「自分はこれで良いのだろうか」と問いかける日々が続いています。当世のキャリア教育の文脈でいえば、脱落者かもしれません。

適職感に限らず、「○○がない」ということに対しては通常、マイナスのイメージを持ちがちです。「○○がない」ことを克服することで見えてくるもの、得られるものが多いことは確かです。しかし視点を変えれば、「○○がある」ことで見えなくなるものもあるのではないでしょうか。どこか冷めた、あるいは退いた視点は、自分を熱くすることはできませんが、自分を相対視・客観視するもう一人の自分を持つきっかけになります。

異質性の担保

ただ、学生の皆さんや周囲の方々に私と同じようなスタンスを期待しているわけではありません。私のようなスタンスの人間ばかりでは、何ごともうまくいかなくなる可能性があります。教育・学習という営みは相互作用です。実践でバリバリ活躍してきた方や、大学のあり方について熱い思いを持つ人がいるからこそ、私のような立場の人間が「異質な存在」となり、気づきや学びを生み出すこともできるのです。

一人ひとりが考えている問題について、大学院という場に身を投じ、異質な考え・意見と出会い、揺り動かされ、遠回りをすることに、むしろ意味があるのです。たとえ最終的な結論が初めのものと同じだったとしても、そうしたプロセスを経ていることで、その結論は"思い"から"確証"に変わっているはずです。

入学を考えている方へ

実践を経験されてきた方は、現場で強い問題意識・思いを温めて大学院に来られる方が多いと思います。それはとても良いことなのですが、実践経験や「強い思い」が自分自身の学びや変化を妨げてしまうこともあります。教員だけでなく学生同士のやり取りを通じて、自分が変わったという経験をすることが学びの醍醐味です。例えば仮装というのは、コスチューム等によって一時的に変身することですが、大学院での学びは、今風の言葉でいえば、コンピテンスの獲得によって持続的な変身を遂げることです。

私が大学院で得てほしいと思うのは、自分自身を、そして自分の実践を振り返るための対話の相手となる「もう一人の自分」です。自分の思いを正当化するための学位や、受け売りするための知識ではなくて、様々な実践の場において「これで良いのだろうか」「よりBETTERな選択肢はないのか」を常に考えるための「もう一人の自分」の獲得――そのささやかな支援ができればと思っています。