授業・履修情報

2013年度シラバス

比較大学論

  

授業科目 比較大学論 

開講予定

 冬学期 土曜5限

担当教員 福留 東土
授業の目的

 この授業では、大学を比較と歴史の視点から探究することにより、大学に関する複眼的かつ幅広い視野を獲得することを目標とする。主にアメリカの大学を対象に講義を行うが、アメリカの大学に関する知識を習得すること自体が目的ではなく、比較史的考察を通して、各人が「大学とは何か」に関する思考を深めることを重視する。

授業の進め方

 

1.         講義形式を主とする。事前学習は重視しない(ただし第2回~第4回を除く)が、その分事後学習を重視する。第5回(11/2)以降は、授業を聞いて考えたことを翌週木曜までにA4・1~2枚の小レポートにまとめ、メール添付で送付すること。この小レポートは成績評価の対象とする。

 2.       期末レポート:海外の個別大学(アメリカに限らない)をひとつ取り上げ、その歴史について調べた内容をまとめること。テーマは自由(創設時の歴史など)。レポートについて中間発表を行う機会を、第5回~第13回の授業中に設ける(質疑応答含め15分程度)。レポートの対象大学・テーマと希望する発表日を10/21(月)までにメールで提出すること(形式自由)。対象大学・テーマについて調整を行うことがある。上記以外のテーマで執筆を希望する場合は相談すること。

授業のスケジュールとテーマ  
10月5日 大学の比較・歴史研究の意義
 ・授業の説明
 ・大学研究における比較
 ・大学研究における歴史
 ・講師の研究紹介
 
 
10月12日 アメリカの大学―システムと機関の基本構造
 ・アメリカの大学に対する視点:事前課題(下記)
 ・アメリカの大学システムの概要:大学を取り巻く管理・規制の構造
 ―重層性と複雑性
 ・アメリカ大学の機関類型―多様性
 ・アメリカの大学(機関)の運営
 
事前課題

 ・ロバート・バーンバウム「ガバナンスとマネジメント―アメリカの経験と日本の高等教育への示唆」広島大学高等教育研究開発センター編『大学運営の構造改革―第31回(2003年度)研究員集会の記録―』高等教育研究叢書80、2003年、26-45頁。(Robert Birnbaum, "Governance and Management: U.S. Experiences and Implications for Japan's Higher Education.")

 ・William G. Tierney, "Globalization, International Rankings, and the American Model: A Reassessment," Higher Education Forum Vol.6, (Hiroshima: Research Institute for Higher Education, Hiroshima University, 2009), 1-17.

 ・論文を事前に読んだ上で、論文の内容を元にしたレポートを書き(A4で2枚程度)、10/10までにメール添付で送付すること。
 
10月19日  アメリカの大学―通史(1):カレッジの時代
 ・1636年のハーバード・カレッジの創設から19世紀前半までの「カレッジの時代」を通史として理解し、カレッジの特色とその展開について考える。
・植民地カレッジの成立基盤、植民地時代・独立後のカレッジの展開の諸相、宗教とリベラル・エデュケーション、カレッジの多様化
 
事前課題

 ・Roger Geiger, "The Ten Generations of American Higher Education," Philip G. Altbach, Patricia G. Gumport & Robert O. Berdahl (Eds.), American Higher Education in the Twenty-first Century: Social, Political and Economic Challenges (Third Edition), (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2011), 38-70 (Chapter2: Generation 1-5).

 ・事前にGeneration 1からGeneration5までを読んだ上で、報告担当者は担当部分の要約と疑問点をまとめ(A4で1枚以内)、10/18までにメール添付で送付すること。(報告担当者は10/12に決定)

 
 
10月21日(月) 期末レポートテーマ提出
 
 
10月26日 アメリカの大学―通史(2):ユニバーシティの時代
 ・19世紀中盤から1970年代に至る「ユニバーシティの時代」を通史として理解し、近代社会の成立・発展と大学の発展・拡大について考える。
 ・新たな大学としての「ユニバーシティ」の成立、大学の変貌、成長と標準化、階層化と多様化、学術革命、戦後の大学
 
事前課題

 ・Roger Geiger, "The Ten Generations of American Higher Education," Philip G. Altbach, Patricia G. Gumport & Robert O. Berdahl (Eds.), American Higher Education in the Twenty-first Century: Social, Political and Economic Challenges (Third Edition), (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2011), 38-70 (Chapter2: Generation 6-10).

 ・事前にGeneration 6からGeneration10までを読んだ上で、報告担当者は担当部分の要約と疑問点をまとめ(A4で1枚以内)、10/25までにメール添付で送付すること。(報告担当者は10/12に決定)

 
 
11月2日  植民地カレッジの成立と展開
 ・カレッジはどのような目的で設立されたのか?
 ・ヨーロッパの知的・文化的遺産
 ・植民地カレッジの特質とその教育
 ・植民地政府とカレッジの関係性
受講生による発表1
 
11月9日 大学の「公」と「私」―ダートマス事件を通して
 ・「公立」「私立」の概念はどのように形成されたのか?
 ・大学を所有・管理するのは誰か?
 ・大学の主権と自治、政府との関係
受講生による発表2
 
11月16日 カレッジの教育―古典教育を巡る議論と「イェールレポート」
 ・カレッジ時代を特徴付ける古典教育とはどのようなものだったのか?
 ・古典教育への反動にはどのようなものがあったのか?
 ・古典教育の意義を主張した「イェールレポート」では何が論じられたのか?
  そのインパクトは?
受講生による発表3
 
11月30日 宗教と科学
・古典的カレッジを特徴付けるキリスト教・教派による影響とはどのようなものだった   のか?
・科学の発展による宗教的信仰の動揺:宗教と科学の対立と宥和
・宗教との対比を通してみる大学の学術と科学とは?
受講生による発表4
 
12月7日 実業と大学
               ―国有地付与大学(ランドグラント・カレッジ)の成立と展開
 ・農業・工業の発展による社会変化と大学教育への需要の変化
 ・連邦政府・州政府による財政的支援と大学教育の関係
 ・ランドグラント・カレッジのタイポロジーと多様性
 ・近代社会の成立と大学への実学の導入過程
受講生による発表5
 
12月14日 研究大学の建設―研究と大学院教育
 ・研究に基づく新たな大学像の現出―大学にとって研究・研究者養成とは何か?
 ・ドイツモデルの影響とジョンズホプキンス大学
 ・シカゴ大学の出現
 ・既存大学へのインパクトと研究大学への変容
受講生による発表6
 
1月11日 拡大と多様化・競争・協調・標準化
                 ―19世紀末から20世紀前半の大学
 ・大学の拡大と多様化・階層化の実態とその影響
 ・大学教育の標準化への動き
   ―中等教育との接続、アクレディテーションの出現、財団の影響力
 ・競争と協調
   ―協調の場としての大学団体とそれを通した差別化・階層化
受講生による発表7
 
1月25日 大衆化・民主化・統制―戦後の大学
 ・連邦政府による財政支援の強化と統制
 ・大学教育機会の拡大と大衆化
 ・学生運動と大学の民主化
 ・多文化主義・平等と大学

受講生による発表8

2月1日 受講生による発表913
 

2月上旬 期末レポート提出 …提出日は追って指示する

成績評価
期末レポート 50%(中間発表は成績評価の対象とはしない)
授業後の小レポート 40%
授業への貢献・報告 10%
参考文献

 ・Philip G. Altbach, Patricia G. Gumport & Robert O. Berdahl (Eds.), American Higher Education in the Twenty-first Century: Social, Political and Economic Challenges (Third Edition), (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2011).

 ・潮木守一『アメリカの大学』講談社学術文庫、1993年。
 ・中山茂『大学とアメリカ社会―日本人の視点から』朝日選書、1994年。
 ・フレデリック・ルドルフ『アメリカ大学史』玉川大学出版部、2003年。
 ・リチャード・ホフスタッター&ウォルター・メツガー『学問の自由の歴史Ⅰ・Ⅱ』
  東京大学出版会、1980年。
 ・クラーク・カー『大学経営と社会環境―大学の効用』玉川大学出版部、1994年。
 ・バートン・クラーク『高等教育システム―大学組織の比較社会学』東信堂、
   1994年。
 他、授業中に適宜提示する。