授業科目 | 比較大学論 |
開講予定 | 冬学期 土曜5限 |
担当教員 | 福留 東土 |
授業の目的 | 大学を比較と歴史の視点から探究することにより、大学に対する複眼的かつ幅広い視野を獲得することを目標とする。主にアメリカの大学を対象に講義を行うが、アメリカの大学に関する知識を習得することが目的ではなく、比較史的考察を通して、各人が「大学とは何か」に関して思考を深めることを重視する。 |
授業の進め方 | 1. 講義形式を主とする。課題は以下の3つとする。 2. 事前課題:授業に先立ち、指定された論文を読んでくること。 3. 小レポート:第5回(11/1)から第12回(1/24)のいずれか3回、授業を聞いて考えたことや質問を翌週木曜までにA4・2枚程度の小レポートにまとめ、メール添付で送付すること。優れたコメント、質問は授業の中で取り上げる。 4. 期末レポート:以下のどちらかで期末レポートを作成すること。 ①海外の個別大学をひとつ取り上げ、その歴史について論じる。テーマは自由(創設時の歴史、何らかの歴史的画期、通史など)。対象大学はアメリカに限らない。 ②特定のテーマを立てて、比較または歴史の観点からそのテーマについて論じる。レポートの中間発表を、第5回~第13回の授業中に設ける(質疑応答含め一人15分程度)。レポートの対象大学・テーマと希望する発表日をメールで提出すること(形式自由)。対象大学・テーマについて調整を行うことがある。必要に応じて事前に相談すること。 |
授業のスケジュールとテーマ | 第1回:10月4日 大学の比較・歴史研究 ・授業の趣旨・内容の説明 ・講師の経歴・研究紹介 ・大学の比較・歴史研究―意義・特質・現状・課題・展望 第2回:10月11日 アメリカの大学システム ・事前課題:アメリカの大学システムを特徴付けるものは何か? ・アメリカの大学システムの概要:大学を取り巻く支援・管理・規制の構造 ・大学システムの重層性と複雑性 第3回:10月18日 アメリカの大学―機関の基本構造 ・アメリカ大学の機関類型―多様性 ・高等教育機関の管理運営の構造 10月21日(火) 期末レポートテーマ提出期限 第4回:10月25日 課題研究 ・比較研究への視野の醸成 ・高等教育の具体的課題を取り上げて「比較研究とは何か」について考察を深める。 ・課題として、学士課程教育、大学院教育、大学ガバナンスを取り上げる。 第5回:11月1日 大学の起源としてのヨーロッパ ・アメリカ大学の起源となった中世・近世のヨーロッパの大学の発展の概要について理解する。 ・ヨーロッパで形成された大学概念 ・アメリカにとってのヨーロッパの知的・文化的遺産とは何か? 受講生による発表1 第6回:11月8日 植民地カレッジからダートマス事件へ ・植民地カレッジの目的、管理形態、植民地政府との関係 ・大学を所有・管理するのは誰か? ・「公立」「私立」の概念形成 受講生による発表2 第7回:11月15日 カレッジの教育―「イェールレポート」と専門職教育 ・カレッジ時代を特徴付ける古典教育の特質 ・古典教育の意義を主張した「イェールレポート」で何が論じられたのか? ・もうひとつのカレッジ教育の伝統としての専門職教育 受講生による発表3 第8回:11月22日 宗教と科学 ・古典的カレッジを特徴付けるキリスト教・教派による影響とはどのようなものだったのか? ・科学の発展による宗教的信仰の動揺:宗教と科学の対立と宥和 ・宗教との対比を通してみる大学の学術と科学とは? 受講生による発表4 休講:11月29日 第9回:12月6日 実務的教育と大学―国有地付与大学(ランドグラント・カレッジ)の成立と展開 ・農業・工業の発展による社会変化と大学教育への需要の変化 ・連邦政府・州政府による財政的支援と大学教育の関係 ・ランドグラント・カレッジのタイポロジーと多様性 ・近代社会の成立と大学への実学の導入過程 受講生による発表5 第10回:12月13日 研究大学の建設―研究と大学院教育 ・研究に基づく新たな大学像の現出―大学にとって研究・研究者養成とは何か? ・ドイツモデルの影響とジョンズホプキンズ大学 ・シカゴ大学の出現 ・既存大学へのインパクトとユニバーシティへの変容 受講生による発表6 第11回:1月10日 拡大と多様化・競争・協調・標準化―19世紀末から20世紀前半の大学 ・大学の拡大と多様化・階層化の実態とその影響 ・大学教育の標準化への動き―中等教育との接続、アクレディテーションの出現、財団の影響力 ・競争と協調―協調の場としての大学団体とそれを通した差別化・階層化 受講生による発表7 第12回:1月24日20世紀の大学とリベラル・エデュケーション ・連邦政府による財政支援の強化と統制 ・大学教育機会の拡大と大衆化 ・学生運動と大学の民主化 ・戦争と大学教育 ・多文化主義・平等と大学 受講生による発表8 第13回:1月31日 受講生による発表9~15 2月上旬 期末レポート提出 …提出日は追って指示する |
成績評価 | 期末レポート 50%(中間発表は成績評価の対象とはしない) 授業後の小レポート 30% 授業への貢献・報告 20% |
参考文献 | ・Philip G. Altbach, Patricia G. Gumport & Robert O. Berdahl (Eds.), American Higher Education in the Twenty-first Century: Social, Political and Economic Challenges (Third Edition), (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2011). ・ 潮木守一『アメリカの大学』講談社学術文庫、1993年。 ・ 中山茂『大学とアメリカ社会―日本人の視点から』朝日選書、1994年。 ・ フレデリック・ルドルフ『アメリカ大学史』玉川大学出版部、2003年。 ・ リチャード・ホフスタッター&ウォルター・メツガー『学問の自由の歴史Ⅰ・Ⅱ』東京大学出版会、1980年。 他、授業中に適宜提示する。 |