授業・履修情報

2015年度シラバス

高等教育論

 

授業科目

高等教育論

開講予定

S1S2 土曜

担当教員

小方 直幸

授業の目的・

授業計画

この授業では、勤務校や日本の大学で起こっている改革等を、さらに進める、ないし批判的に再考する際に寄与し得る、大学(改革)を論じる上で核となる論理(引き出し)を身につけることを目的とします。なお、授業で扱う資料については、少数の資料を精読する方向と、多くの資料を多読する方向とが想定されますが、この授業では後者、つまりここ150年くらいの議論をできるだけ多く読みこなすことで、大学を論じる際の軸を複数修得してもらいます。

 これまでこの授業では、古いものから新しいものを読むというオーソドックスな方法を採用してきましたが、現在の大学や大学改革との関係で位置づけることが困難だという意見や反応もありました。そこで今年度は方法を変え、新たな試みとして、新しいものから古いものへと遡って読んでみます。受講生の皆さんは、どの年代や内容の文献まで勤務校や大学のあり方を考える上で参考になるか、なぜ途中までしか参考にならないのか、あるいは、なぜ150年前のものも現代に息づくのか、という理由を考えながら学んでいってください。

 各回の流れ:

4/11 授業への臨み方を確立する
・今大学で起こっていることと、それを貫いていると思われる大学論は何か、受講者自身の経験に基づいて各自で記述し、加えてそれに対する自身のスタンス、考え方を具体的に述べてもらい、レポートを作成します。
 
4/18 授業への臨み方を確立する
・前の週で書いたレポートを受講者間で共有し、受講者が大学を論じる際に既に持っている考え方とその一様性や多様性を理解します。
 
4/25 現代の大学論:金子元久2013『大学教育の再構築』玉川大学出版部・日本の大学の生成構造と現代の大学教育の問い直しの構造を理解し、実証データに基づいて改革の方向性を探ります。
 
5/2 現代の大学論:ボック2004『商業化する大学』玉川大学出版部
・大学はより多額かつ多様な資金を必要としている一方で、それは大学としての価値を犠牲に行われていないか、生じている事態を反省的に顧みます。
 
5/9 現代の大学論:ペリカン1996『大学とは何か』法政大学出版局①
・イェール大学創立300年記念行事に行った連続講義に端を発して書いたニューマン(後出)の現代的再考による大学論を学びます。
 
5/23 現代の大学論:ペリカン1996『大学とは何か』法政大学出版局②
 
5/30 フンボルト的大学とは:潮木守一2008『フンボルト理念の終焉?』東信堂①
・大学のコアが研究活動にあることのコアとなったと目されるフンボルト理念。その実態を学ぶと同時に、フンボルト理念の現代的意味を考えます。
 
6/6 フンボルト的大学とは:潮木守一2008『フンボルト理念の終焉?』東信堂②
 
6/13 20世紀初頭の大学論:フレクスナー『大学論-アメリカ・イギリス・ドイツ』玉川大学出版部①
・アメリカの医学教育に大きな影響を与えたフレクスナーが1930年に展開した科学・研究重視の大学論を学びます。
 
6/20 20世紀初頭の大学論:フレクスナー『大学論-アメリカ・イギリス・ドイツ』玉川大学出版部②
 
7/4 20世紀初頭の大学論:オルテガ1996『大学の使命』玉川大学出版部

・大学で教えるということはどういう意味で、いかなる工夫が必要であるのか、教育と研究の関係をどう捉えればよいのか、フレクスナーとほぼ同時期に書かれたが、その方向性は異なる大学論を学びます。

7/11 19世紀の大学論:ニューマン1983『大学で何を学ぶか』大修館①
・教養教育とは何か、1850年代の大学論の原典を通して、知と知の関係、有用とは何かについて考えます。
 
7/18 19世紀の大学論:ニューマン1983『大学で何を学ぶか』大修館②

※授業後、最終レポートを執筆(〆切は7月末日)

成績評価

 初回に書いてもらったレポートが、13回の授業を通じてどう変化・進展するかを、最終レポートで確認し、成績をつけます。初回のレポートの内容は、成績評価に直接影響することはありません。皆さんの最終レポートの内容は一様ではありませんし、一定の到達水準を設けているわけでもありません。最初に書いたレポートと最終レポートの異同が、学びの成果であり、それを自己判断してもらいたいと思います。