授業・履修情報

2015年度シラバス

比較大学論

 

授業科目
 比較大学論 

開講予定

 A1A2 土曜5

担当教員
 福留 東土
授業の目的

 この授業では、大学を比較と歴史の視点から探究することにより、大学に関する複眼的かつ幅広い視野を獲得することを目標とする。主にアメリカの大学を対象に講義を行うが、アメリカの大学に関する知識を習得すること自体が目的ではなく、比較史的考察を通して、各人が「大学とは何か」に関する思考を深めることを重視する。

授業の進め方

1.         授業の課題は以下の3つとする。

2.         事前課題:第5回以降の授業については、当日の授業に先立ち、事前講義を視聴してくること。視聴法は後ほど指定する。第2回、第3回については指定された論文を読んでくること。

3.         小レポート:第5回(10/17)から第12回(12/12)のいずれか3、事前講義を聞いて考えたことや質問をその授業の週の木曜までにA4・2枚程度の小レポートにまとめ、メール添付で送付すること。コメント、質問は授業中に議論の素材として用いる場合がある。

4.         期末レポート:以下のどちらかで期末レポートを作成すること。

①海外の個別大学をひとつ取り上げ、その歴史について論じる。テーマは自由(創設時の歴史、何らかの歴史的画期、通史など)。対象大学はアメリカに限らない。
②特定のテーマを立てて、比較または歴史の観点からそのテーマについて論じる。
 
 レポートの中間発表を、第5回~第12回の授業中に設ける(質疑応答含め一人30分程度)。レポートの対象大学・テーマと希望する発表日を10/7(水)までにメールで提出すること(形式自由)。対象大学・テーマについて調整を行うことがある。必要に応じて事前に相談すること。
授業のスケジュールとテーマ 
 
<授業スケジュールとテーマ>
1
9/12
導入講義
2
9/19
課題研究
3
10/3
アメリカの大学システム
4
10/10
アメリカの多様な大学
5
10/17
植民地カレッジ
6
10/24
ダートマスカレッジ・ケース
7
10/31
イェール・レポート
8
11/7
ランドグラント・カレッジ
9
11/14
研究大学と大学院教育
10
11/28
システム化:拡大と多様化
11
12/5
20世紀前半の大学とリベラル・エデュケーション
12
12/12
戦後の大学
 
 <各回のテーマと内容>
 
1回:912日  大学の比較・歴史研究
・授業の趣旨・内容の説明
・講師の経歴・研究紹介
・大学の比較・歴史研究について
・大学院における研究について
 
2回:919日  課題研究
・比較研究への視野の醸成を目的に行う。
・高等教育の具体的課題を取り上げて、「比較研究とは何か」について考察を深める。
・課題として、学士課程教育、大学院教育、大学ガバナンスを取り上げる。
 
3回:103日 アメリカの大学システム
・事前課題:アメリカの大学システムを特徴付けるものは何か?
・アメリカの大学システムの概要:大学を取り巻く支援・管理・規制の構造
・大学システムの重層性と複雑性
 
事前課題

・William G. Tierney, "Globalization, International Rankings, and the American Model: A Reassessment," Higher Education Forum Vol.6, (Hiroshima: Research Institute for Higher Education, Hiroshima University, 2009), 1-17.

・ ロバート・バーンバウム「ガバナンスとマネジメント―アメリカの経験と日本の高等教育への示唆」広島大学高等教育研究開発センター編『大学運営の構造改革―第31回(2003年度)研究員集会の記録―』高等教育研究叢書80、2003年、26-45頁。(Robert Birnbaum, "Governance and Management: U.S. Experiences and Implications for Japan's Higher Education.")

・・・両論文を事前に読み、内容を理解してくること。
 
 
107日(水) 期末レポートテーマ提出期限
メールで送付すること。各人のレポートで対象とする機関やテーマを授業で取り上げることがある。
 

4回:1010日 アメリカの多様な大学

・アメリカ大学の機関類型―多様性
・高等教育機関の管理運営の構造
 
事前課題
上記の通り、期末レポートのテーマを10/7までに送付すること。
 
 
5回:1017日 アメリカの植民地カレッジ
・アメリカ大学の起源となった中世・近世のヨーロッパの大学の発展の概要、およびヨーロッパで形成された大学概念について理解する。
・アメリカはいかにしてヨーロッパの大学を新大陸に移入させたのか?またそれはどこまで可能であったのか?
・アメリカにとってのヨーロッパの知的・文化的遺産とは何か?
受講生による発表1
 
事前課題

・Roger Geiger, "The Ten Generations of American Higher Education," Philip G. Altbach, Patricia G. Gumport & Robert O. Berdahl (Eds.), American Higher Education in the Twenty-first Century: Social, Political and Economic Challenges (Third Edition), (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2011), 38-70 (Chapter2: Generation 1-2, pp.37-41).

 
6回:1024日 独立後の大学とダートマスカレッジ・ケース
・植民地カレッジの目的、管理形態、植民地政府との関係
・大学を所有・管理するのは誰か?
・「公立」「私立」の概念形成
受講生による発表2
 
事前課題
l Roger Geiger, "The Ten Generations" Generation 3-4, pp.41-46.
 
7回:1031日 カレッジの教育―「イェール・レポート」と専門職教育
・カレッジ時代を特徴付ける古典教育の特質
・古典教育の意義を主張した「イェール・レポート」で何が論じられたのか?
・もうひとつのカレッジ教育の伝統としての専門職教育
受講生による発表3
 
事前課題
l Roger Geiger, "Ten Generations" Generation 5, pp.46-49.
 
 
8回:117 実務的教育と大学―国有地付与大学(ランドグラント・カレッジ)の成立と展開
l 農業・工業の発展による社会変化と大学教育への需要の変化
l 連邦政府・州政府による財政的支援と大学教育の関係
l ランドグラント・カレッジのタイポロジーと多様性
l 近代社会の成立と大学への実学の導入過程
受講生による発表4
 
事前課題
・Roger Geiger, "Ten Generations" Generation 6, pp.49-52).
 
9回:1114日 研究大学の建設―学術研究と大学院教育
・研究に基づく新たな大学像の現出―大学にとって研究・研究者養成とは何か?
・ドイツモデルの影響とジョンズホプキンズ大学
・シカゴ大学の出現
・既存大学へのインパクトとユニバーシティへの変容
受講生による発表5
 
事前課題
・Roger Geiger, "Ten Generations" Generation 6, pp.49-52).
 
 
10回:1128日 拡大と多様化・競争・協調・標準化―19世紀末から20世紀前半の大学
・大学の拡大と多様化・階層化の実態とその影響
・大学教育の標準化への動き―中等教育との接続、アクレディテーションの出現、財団の影響力
・競争と協調―協調の場としての大学団体とそれを通した差別化・階層化
受講生による発表6
 
事前課題
・Roger Geiger, "Ten Generations" Generation 7, pp.52-55).
 
 
11回:125日 20世紀の大学とリベラル・エデュケーション
・連邦政府による財政支援の強化と統制
・大学教育機会の拡大と大衆化
・学生運動と大学の民主化
・戦争と大学教育
・多文化主義・平等と大学
受講生による発表7
 
事前課題
・Roger Geiger, "Ten Generations" Generation 8, pp.55-58).
 
 
12回:1212日 大衆化・民主化・統制―戦後の大学
・連邦政府による財政支援の強化と統制
・大学教育機会の拡大と大衆化
・学生運動と大学の民主化
・多文化主義・平等と大学
受講生による発表8
 
事前課題
・Roger Geiger, "Ten Generations" Generation 9-10, pp.58-64).
 
201625日(金) 期末レポート提出
 
成績評価
 期末レポート 50%(中間発表は成績評価の対象とはしない)
 授業後の小レポート 30%
 授業への貢献・報告 20%
参考文献

 ・Philip G. Altbach, Patricia G. Gumport & Robert O. Berdahl (Eds.), American Higher Education in the Twenty-first Century: Social, Political and Economic Challenges (Third Edition), (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2011).

・潮木守一『アメリカの大学』講談社学術文庫、1993年。

・中山茂『大学とアメリカ社会―日本人の視点から』朝日選書、1994年。

・フレデリック・ルドルフ『アメリカ大学史』玉川大学出版部、2003年。

 他、授業中に適宜提示する。