授業科目 | 高等教育論 |
開講予定 | S1S2 土曜 |
担当教員 | 小方 直幸 |
授業の目的・ 授業計画 | 授業の目的: この授業は、勤務校や他の大学で起こっている取組や改革を、さらに進める、ないし批判的に再考する際に寄与し得る、大学(改革)を論じる上で核となる論理(引き出し)を身につけることを目的とします。大学が進む方向や課題解決策を考える前提として昨年は、大学とは何かを考えてもらう機会を提供ましたが、今年度は学生に焦点をあてます。学生に関わって、自身が実践している・思考していることの意味や意義を再考する契機としてください。授業で扱う資料は、少数の資料を精読する方向と、多くの資料を多読する方向とが想定されますが、扱うテーマに応じて、それらは使い分けていきます。大学に関わっていく上で、学生を視点に入れることで得られるものを複数修得してもらいます。なお、学生を扱うわけですが、この授業は「高等教育論」であって、「学生支援論」ではありません。この点を予め了解した上で受講してください。 資料と読み方: 読む資料は毎回TAから送付してもらいます。事前に該当箇所を読んできてください(その他様式等があればその都度指示します)。それを前提に授業を行います。資料内容の確認は授業で行いますが、自身の読みとその際に考えたことを重視するため、原則こちらからレジュメの配布等は行いません。自分にとって重要と思われることがあれば、各自ノートテイクをしてください。ただしノートテイクが目的ではありません。授業に臨む際には、当該資料に書かれていることが、勤務校等の大学でも確認されるか否か、その理由は何か、を常に考えてください。授業での学びと勤務校での業務等との関係に対する気づきのメモが積算していくように心がけてください。それを実行するには、目の前の業務等から視野を広げ大学全体で起こっていることの考慮や、教職員や学生など構成員との対話を通じた認識が不可欠です。 各回の流れ:(受講状況をみて、途中で変更になる可能性があります) 4/8 導入:学ぶ意図の明確化 ・大学と学生はどのような関係にあるのか、現時点での自身の考えを整理してもらった上で、受講生との異同の確認を行ってもらい、次週以降の授業の準備を行います。 4/15 日本の大学生論①:溝上慎一2002『大学生論』ナカニシヤ出版、伊藤彰浩2013「大学大衆化への過程」 ・戦後の日本の大学生論の展開を学び、大学における学生を考える際の導入とします。 4/22 日本の大学生論②:橋本鉱市編著2010『大学生-キャンパスの生態史』玉川大学出版部、広田他編2013『大衆化する大学-学生の多様化をどうみるか』岩波書店 ・アプローチの異なる2冊の書籍からそれぞれ1つの論文(計2本)を受講生自身が選択し、グループワークの中で報告し、議論してもらいます。 4/29 高等教育論としての学生①:リースマン1986『高等教育論』玉川大学出版部 ・教授団支配から学生消費者主義へ。多様な高等教育機関を抱えるアメリカにおいて、学生の位置づけをどう考えればよいのか、既に古典の部類に入りますが、今なおその議論は通用すると考えられるリースマンの著作を学びます(※授業延長あり)。 5/13 高等教育論としての学生②: ・引き続き、リースマンの著著を学びます。 6/3 離学の実践研究:日本中退予防研究所2011『中退予防戦略』等 ・個別大学レベルの中退の状況とそれに対する対応について学びます。書籍から1事例、勤務校等から1事例の複数の事例について、グループ内で意見交換します。 6/10 離学のマクロレベル研究:丸山1984「大学退学に対する大学環境要因の影響力の分析」『教育社会学研究』、村澤2008「大学中途退学の計量分析」『比治山大学高等教育研究紀要』、内田2011「大学生の中途退学の実態と対策」『大学マネジメント』、立石・小方2016「大学生の退学と留年」『高等教育研究』等 ・退学をマクロ的に考察した学術論文を講読し、マクロ分析からいえることの確認と、実践への応用可能性について、その限界も踏まえて考えます。 6/17 離学論①:Tinto1996『Leaving College, 2ed』The University Chicago Press ・学生の離学をどのように捉えればよいのか、ティントの書籍から体系的に学びます。 6/24 離学論②: ・引き続き、離学について体系的に学びます。 7/1 障害とは:爆笑学問、高山恵子2012「ADHDのサバイバルストーリー」ぶどう社、栗原類2016『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』KADOKAWA等 ・ビデオの視聴や障害者自身の言説に接することを通して、大学と障害学生を考える際の導入として、障害とは何かを考えます。 7/8 障害とは:河東田博2009『ノーマライゼーションの原理とは何か』現代書館等 ・障害学生の大学での学びや生活を考える際の原点として、ノーマライゼーションの原理について学ぶ予定です。 7/15 大学における障害学生支援: ・前2回の学びを踏まえて、大学における障害学生支援を考えます。可能ならば、ゲストを招聘したいと考えています。 ※授業後、最終レポートを執筆(〆切は7月末日を予定) |
成績評価 | 毎回の授業の準備状況、授業への参加具合、レポートを加味して行います。授業開始時に考えていた大学と学生の関係に対する自身の考え方等が、授業終了時に変化したのか、変化しなかったのか、またその理由は何か、についての自覚作業を継続してください。 |