1.授業の概要
集中講義日程:2019年7月22日(月)~26日(金)
訪問先:アメリカ合衆国カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)http://www.berkeley.edu/
2.授業の趣旨
本授業は海外の大学を訪問する集中講義である。本年度は米国の代表的な州立研究大学のひとつであるカリフォルニア大学バークレー校を訪問する。
本授業は、大学の比較研究に対する視野を醸成することを目的とする。現地で講義を受け、米国の大学人とディスカッションすることを通して、米国の研究大学の制度と実態について学ぶ。それを通して、大学に関する比較考察の視点を獲得し、日本の大学のあり方について考察する上での示唆を得る。
アメリカの大学は世界の大学改革のモデルと位置付けられているが、その実態は実は十分に理解されていない。文化や制度的伝統の異なる海外の実態を、その背後にある文脈を含めて理解することは簡単な作業ではない。この授業では、まず予断を入れずにアメリカの大学の実態を理解しようとすることが重要である。その上で、受講生各自の関心に即して事前調査やレポート執筆を行うことを通して、比較の視点から日本の大学像を相対化し、大学に対する幅広い知見を獲得することを目指す。
今年度は集中講義の中心テーマを「学士課程教育、学生支援、IR」に設定する。アメリカの大学教育は、歴史的に「親代わり政策」を理念としており、学士課程教育と学生支援の考え方、およびそれを背景とする体制にも日本の大学とは違いがみられる。「学生のための大学」という観点からみたときに、日本の大学の課題に対してアメリカの大学がもたらす示唆は少なくない。また、授業では、それら教育や学生支援、さらには大学経営を支えるシステムとしてのIRを取り上げる。
ただし、すべての受講生が関心あるテーマを見出せるよう、希望に応じてそれ以外のテーマの設定も検討する。各自の関心のあるテーマに関する理解を深める機会としてもらいたい。
3.講義テーマ(予定)
1. 学士課程カリキュラム
2. 学士課程における学習促進プログラム
3. 学士課程学生による研究活動
4. アカデミック・アドバイジング
5. 学習支援システム
6. 経済的支援
7. アドミッション
8. プログラムレビュー
9. IR
10. 学生の学習成果アセスメント
+受講生の希望を聴取してテーマを追加する・・・適宜相談すること。可能性として、下記にあるような形のテーマ設定で教職員に講義を依頼することが可能である。
・2016年度集中講義のテーマ
1. “Governance at the University of California: An example of Faculty Involvement”
2. “California Master Plan, Relationship between State of California and State Higher Education System”
3. “Research Administration and Support”
4. “Undergraduate Admissions”
5. “Student Learning Outcomes and Assessment at Berkeley: Approaches, Challenges, and Opportunities”
6. “The President in the UC System: A Staff Perspective”
7. “Strategic Planning and Academic Program Reviews”
8. “Cal Alumni Association and Alumni Relations”
9. “Organizational Structure and Governance of The University of California: Comparative University Governance and the roles of Provost”
10. “Institutional Research: Survey Management & Data Analysis at UCB’s IR Office”
11. “Berkeley's Global Engagement Strategy”
12. “Undergraduate Research and Scholarships”
13. “Academic Advising”
・2013年度集中講義のテーマ
1. 「カリフォルニア大学の組織構造とガバナンス―他大学との比較的考察」
2. 「カリフォルニア大学の学長の位置づけと役割―学長オフィス・スタッフの視点から」
3. 「教養学部の学習促進・高度化プログラム」
4. 「バークレーのグローバル事業とその戦略」
5. 「カリフォルニアのマスタープラン―州と高等教育システムの関係」
6. 「UCバークレーにおけるリベラルアーツと学士課程教育」
7. 「UCバークレーの計画分析室と機関データ」
8. 「UCバークレーIRオフィスの学生調査とデータ分析」
9. 「UCバークレーのプログラムレビュー」
10. 「UCバークレーにおける学生の学習成果アセスメント―アプローチ・課題・機会」
11. 「UCバークレーの教員キャリアとガバナンス」
12. 「WASCによるアクレディテーションと学士課程教育のアセスメント」
4.講義資料
Dropboxに格納
5.事前・事後学習会
<事前学習会>
以下をテキストとして用いる。同書の執筆者で過去のバークレー集中講義参加者の修了生にゲスト講師を依頼する。4~5回開催する予定。詳細は後述。
また、その他の勉強会、事前打合せ等を行うので、指示に従うこと。
福留東土編『カリフォルニア大学バークレー校の経営と教育』広島大学高等教育研究開発センター高等教育研究叢書149、2019年3月。
<事後学習会>
受講者は、集中講義終了後、9月上旬を目途に期末レポートを執筆する。事後学習会はその発表会として行う。日程については追って決定する。
6.受講生に求めること
・原則としてすべての事前・事後学習会、講義に参加すること。
・事前に期末レポートの執筆テーマを決め、事前学習会での発表と期末レポートの提出を期日を守って行うこと。
・十分な準備を行った上で講義に臨み、現地のセッションでは講義を聴くだけでなく、積極的に質問・コメントをすること。
・集中講義が全受講生にとって有意義な経験となるよう、受講生間で情報交換を図り、協力し合うこと。
・当コース修了生、東京大学職員が参加する可能性がある。相互に協力し合って、皆が有意義な経験をできるよう心掛けること。
7.現地訪問スケジュール
・航空便、ホテルは各自手配すること。
・以下はデフォルトとなる日程。下記の通り、JASSO奨学金の支給を希望する場合、8日以上の滞在が必要。
7/21(日)日本出発、現地到着
7/22(月)~26(金) 現地での講義
7/28(日)現地出発
7/29(月)日本到着
渡航スケジュール
7/21(日)日本出発および現地到着、現地集合・食事会
・ 各自の状況によりこれ以前の出発も可
7/22(月)~26(金) 集中講義実施
・ セッションは原則1日2つ(各2時間)。9:30~11:30、昼食、1:00~3:00とする。セッションの総数により、時間帯を調整することがある。
・ 講義終了後、夕方にかけてエクスカーション
7/27(土)スタンフォード大学、サンフランシスコ市立大学ツアー
7/28(日)現地出発
・ 各自の状況により滞在を延ばすことも可
7/29(月)日本到着
※渡航スケジュールは各自で決定。必要に応じて相談すること。
空港と航空券
最寄の空港はサンフランシスコ国際空港(SFO) http://www.flysfo.com/jp
空港からバークレーまでは電車(BART)でアクセス可 http://www.bart.gov/guide/japanese
乗合シャトルバン、タクシーもあり
羽田、成田からJAL、ANA、United、Americanの直行便あり。これ以外に、ロサンゼルス(LAX)経由、シアトル(SEA)経由もあり。
航空券は各自手配。
宿泊
別途案内する。
Downtown Berkeley Inn, Hotel Durant, Hotel Shattuck Plaza, Berkeley City Club, Rose Garden Inn, Downtown Berkeley YMCA Hotelなど。
下記のホテル予約サイトなどから各自クレジットカードを使って事前予約を入れること
8.留学奨学金の受給について
本授業は、日本学生支援機構の海外留学支援制度(協定派遣)に採択されている。受講者(正規大学院生に限る)は渡航に際し、一定額の経済支援を受けることができる。ただし、8日以上現地に滞在することが条件となる。詳細はガイダンス時に説明する。
採択プログラムの概要は以下の通り。
採択プログラム名 | 「グローバル化時代を支える大学経営プロフェッショナル育成プログラム」 |
概要 | 本プログラムは、東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策コースの専門科目「比較大学経営論」として開講される。大学院生を米国の大学に派遣し、現地の大学経営幹部、教員、専門スタッフと交流することで、グローバル化時代に対応した先進的な大学経営システムの知識修得、及び英語力向上を図っている。現代日本の大学は、グローバルな展開を図ることによってそのポテンシャルを高めることが可能となる。同時に、グローバル化と市場化の中で共通の課題を抱える海外大学と交流することで、新時代に相応しい大学経営のアイディアを交換し、プロフェッショナルとしての意識を高めることが重要である。本コースは、近年、専門職化の要請が高まっている大学管理者層やミドルマネジメント、高度な能力を持った大学内専門職の養成を使命とし、修士・博士課程で約50名の人材を受け入れ、育成を行っている。「比較大学経営論」は、2005年度のコース開設時から10年以上に渡り、毎年開講されている特色ある科目である。協定先大学において、主に、大学財務、グローバル化戦略、学生支援、研究戦略、組織運営をテーマにプログラムを実施する。プログラム構築に当たっては、現地大学の高等教育研究者に加え、大学経営幹部、教職員の協力を広く得る。長年、本プログラムを実施してきた成果として、2018年度に協定大学の教員の日本への長期招聘が実現し、またこれまで複数の教員が短期で来日し、本プログラムの内容面の充実を支援している。そうした成果により、2019年度より協定大学が2校に増えることとなった。 |
9.授業の全体計画
4月6日(土) | 授業ガイダンス | 授業計画の説明、質疑応答 |
5月9日(木) | 受講者確定 | 履修予定者は福留までメールで連絡 ・期末レポートの予定テーマ(およそでよい、変更可)を添えること。現地で講義を依頼したいテーマがある場合はこの時までに伝えること。 ・各自、参考文献の購読、およびウェブを使った事前調査を開始 ・航空券、ホテルを各自手配 ・この後、奨学金関連の連絡をするので対応すること |
5月11日(土) | 第1回事前学習会 | 18:45~20:45 赤門200 |
6月15日(土) | 第2回事前学習会 | 18:45~20:45 赤門200 |
6月19日~25日 | 履修登録 | 忘れずに登録を行うこと。 |
6月29日(土) | 第3回事前学習会 | 18:45~20:45 赤門200 |
7月6日(土)and/or 13日(土) | 第4回事前学習会 | 現地でのショートプレゼンの予行演習 |
7月22~26日 | 現地での集中講義 | |
9月上旬 | 期末レポート提出 | 締め切りは追って連絡 |
9~10月 | 事後学習会 解団式 | 日程は追って連絡 |
※5/9までに参加を確定させ、連絡すること。職場の都合などにより、それまでに確定しない場合でもその旨連絡すること。
事前学習会の詳細
第1回:5月11日(土)
平田光子(日本大学大学院生産工学研究科・教授)
「組織論の基本と事例としてのUCバークレー―IR活動に焦点をあてて―」(叢書第3章)
第2回:6月15日(土)
長野公則(国際公認投資アナリスト)
「カリフォルニア大学バークレー校のリベラル教育」(事前資料配布)
河本達毅(文部科学省高等教育局大学振興課)
「学習成果に基づく内部質保証サイクルの考察-カリフォルニア大学バークレー校の取組を踏まえて-」(叢書第7章)
第3回:6月29日(土)
蝶慎一(大学改革支援・学位授与機構・助教)
「カリフォルニア大学バークレー校の学習支援に関わる担い手の考察―Student Learning Center(SLC)の取組を中心に―」(叢書第10章)
王帥(東京大学社会科学研究所・助教)
「アメリカにおける学生への経済支援-カリフォルニア大学バークレー校を事例に-」(叢書第11章)
10.期末レポート
・ 原則として講義テーマの中から、各自の興味関心に合わせてテーマ設定を行うこと。履修確定時に希望テーマについて聴取するので、できるだけ具体的に研究関心を記すこと。複数の受講生でテーマが重なる場合は、担当部分をブレークダウンして具体的に分担を行うなど調整を行う場合がある(必要に応じて個別に連絡する)。
・ 講義テーマ以外のテーマでレポートを執筆することも可。その場合、滞在中、関係者へのインタビューや資料収集を行うことを勧める。必要なサポートを行う。
・ レポートはフォーマットを定めるのでそれに沿って執筆すること。分量は特に定めないので、書きたいことを自由に書くこと。例年、A4で5枚~15枚である。
・ レポートは公開に同意する受講生の分はコースウェブサイトで公開する。
<授業レポートについての考え方>
投稿論文などの学術論文を書く場合、定められた分量の中で目的と対象を明確に設定し、論理の通った実証的分析によって一定の結論を導き出す必要がある。これに対して、授業のレポートでは、限られた時間、資料の中で取り組むこともあり、完成されたものというよりも、自分なりに調べ、考えたプロセスを書くことが中心となる。明確な結論を導き出す必要は必ずしもない。調べる中で考えたこと、暫定的な見解、仮説、疑問に思った点、今後調べてみたいこと、調べる中で新たに関心を持った点など、自由度を持って書いて構わない。
ただし、自分がレポートを書く意図や問題関心を、できるだけ言葉にすることを意識すること。また、考えるプロセスにおける論理的思考が重要である。テーマに対する明確な結論はなくてもよいが、それについて考えたプロセスを自分なりの言葉で表現することが重要。すなわち、資料と時間が限られていても、可能な範囲で思考を深めようと心掛けることが大事である。また、時間を置いて、自分の書いたレポートを読み返すと、新鮮な眼で過去の自分を振り返ることができる。そうしたことを含めて、授業レポートを自分の思考を深める機会として活用してもらいたい。
11.参考資料
事前に以下に目を通しておくこと
・ 連邦教育省のIPEDSによるバークレーの基本情報
https://nces.ed.gov/collegenavigator/?q=berkeley&s=all&id=110635
●参考資料(後日配布)
・ Switkes, Ellen “Governance at the University of California: An example of faculty involvement,” Research Institute for Higher Education, Hiroshima University (Ed.) Comparison of University Governance: USA, UK, France and Japan, (Report of the International Seminar on University Governance), 2013, pp.1-22.
・ 福留東土「アメリカの大学評議会と共同統治―カリフォルニア大学の事例」『大学論集』第44集、広島大学高等教育研究開発センター、2013年3月、51-64頁。
・ 福留東土「アメリカの大学における内部質保証-カリフォルニア大学のプログラムレビューを通して-」『KSU高等教育研究』第2集、くらしき作陽大学高等教育研究センター、2013年3月、33-45頁。
・ 福留東土「アメリカ合衆国における高等教育の質保証―機関内部の点検・評価の事例―」広島大学高等教育研究開発センター編『大学教育質保証の国際比較』特別教育研究経費成果報告書Ⅳ、2011年4月、89-99頁。
12.その他
留意事項
パスポートを持っていない場合は早目に取得しておくこと。
事前に必ず海外旅行保険に各自で加入し、保険の情報をコース事務室に連絡すること。クレジットカードに上乗せする保険でも可だが、すべての項目が補償されていることを確認すること。他の事前連絡事項についても履修登録後、コース事務室から連絡するので必ず提出すること。
英語力について
本授業では特段高い英語運用能力は要求しない。英語能力の巧拙によって成績評価を行うことはない。重要なのは相手の話を理解し、自分の言いたいことを伝えようとする姿勢であり、英語能力が履修の障害とならないよう必要なサポートを行う。現地講師にはできるだけ基本事項を中心に説明してもらうので、事前に十分な準備を行い、主要な用語等について一通りの理解を持った上で講義に臨むことが重要。講義中の通訳は原則として行わないが、必要に応じて日本語での補足説明を行う。また、必要な場合は受講生の質問を通訳する。不明な点は遠慮せずに講師に質問すること。
現地でのエクスカーション
キャンパスツアー
サンフランシスコ市内観光
大リーグ観戦
日本学術振興会サンフランシスコオフィス訪問
スタンフォード大学、サンフランシスコ・シティカレッジ(コミュニティ・カレッジ)キャンパスツアー
4th Street/ Gourmet Ghetto (Shattuck Avenue)
受講生の役割分担・・・事前学習会の際に決定
写真撮影
講義録音
会食
点呼・連絡・LINE管理
謝礼品運搬・渡し
エクスカーション