担当:両角亜希子
TA:佐藤 寛也、西 健太郎
ゲスト講師(7月26日):矢野眞和先生
※ZOOMの場所などの必要な情報は、google classroomで指示する。
※シラバスの説明、インタビューの仕方についての簡単な解説は、事前ビデオを作成しましたので、授業開始までに各自ご覧ください。
授業の目的・ねらい
今年度の大学経営事例研究の授業では、質的なデータを収集し、それを分析する方法について、実践をしながら学ぶことを目的としています。量的な分析と質的な分析はそれぞれに強みと弱みがあり、それらを組み合わせることで、問いに対してより深い理解が得られることも多く、様々な分析手法を身につけることはとても重要です。大学経営・政策コースでも、インタビュー等の質的データを用いて、修士論文・博士論文を執筆する方は少なくないですが、収集したデータをどのように整理・分析して、論文にしていくのか、というところで悩みを抱える方が少なくありません。量的な方法と異なり、研究枠組みや仮説が最初からあるわけでなく、流動的であるため、その探索的な過程を楽しむというよりも不安に感じる方も多い印象を受けています。
質的データの方法論については、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)、エスノグラフィー、ナラティブ分析などの様々な手法が開発されてその解説本も多く出ていますが、一部ではやや技術的な工夫に片寄りすぎて、かえって使い勝手が悪い方法論もあるように感じています。質的な分析の基礎は、インタビューで得た発話を文字にして、それらをうまく言い表す名称や文句を抽象化してラベルを貼ることを通して、何らかのパターンを見出すコードをふり、類似したコードでカテゴリーを作り、それらの関係性などについて、カテゴリー/テーマをつなげ、データを説明するストーリーを構築するというところにあると考えます。また、この手の手法は実践してみて、獲得していくことがとても重要だと考えます。そこで、本授業では、古典的な手法ともいえるKJ法に着目して、それを実践してみることで、質的な方法論についての理解を深め、実際に使えるようになることを目指します。
授業の日程・課題
授業全体のスケジュールは以下の通り。授業は4日間で行うが、それ以外の事前・事後の課題をすべて行うことで、高い効果があげられると考えます。授業の日は授業後に、リフレクションシートを提出してもらいます。KJ法を実践する日は対面で実施したかったのですが、東京のコロナ感染拡大が広がっており、研究科の許可が下りませんでしたので、オンラインで実施します。
課題に対しては教員からのフィードバックのほか、全員に共有することにします。ほかの学生さんの書いたものを見て、学ぶというのも貴重な経験になります。全員の学習効果を高めるためですので、ご協力をお願いします。ほかの方に見せたくない内容などがありましたら、その部分は講師に別途送ってください。
課題①② | 【課題①】課題文献2冊(川喜多二郎『発想法』)、上野千鶴子『情報生産者になる』)を読む。読書メモのようなものの提出は求めないが、読んでいることを前提として授業を行う。また、KJ法についてわからないことは7月26日の授業で質問ができるように準備しておく。 【課題②】インタビューを用いて書かれた論文について探して読み(テーマは高等教育に限らなくてもよい)、下記の点についてまとめ、7月25日の授業で発表できるように準備する。①~③は大学経営政策研究で行っているのと同じ作業。7月24日の昼までに提出。 ① 問題意識・関心を、具体的な問いや明らかにしたいことに、先行研究を組み込みながら、どう落とし込んで設定しているか。 ② 設定した問いに相応しい方法の選択や、データ・資料の収集・加工がどのようになされているか。 ③ 設定した問いに対して、用いた方法を通して、どのように説得的かつ分厚い考察・解釈を行っているか。 ④ 質的方法を採用したことのメリットはどこにあるか。分析や解釈の面でどのような点が参考になったのか、あるいは疑問が残った点は何か。 |
7/25(土) | 【受講生による発表】課題②についての各自の発表(1人7分程度で準備してください) 10-17時を予定(オンラインのため、適宜、休憩を入れて進めます) グーグルフォームに全発表者へのコメント・質問を記入しながら進めます(かなりタフです) |
7/26(日) | 【矢野先生による講義と質疑】KJ法の意義・やり方・実践例の紹介 午後1-5時くらいを想定(1時間程度の講義+休憩を3セットほど) |
課題③ | 【課題③】8月1日の授業で2つのテーマについてKJ法を行います。 テーマ①の大学教員にとっての教育と研究の関係はどなたにとっても少し遠めのテーマということで選びました。日本の大学教員はその両立に困難さを感じる割合が高いことが知られてますが、そもそも両者の関係をどのように考えているのか、勤務先などの教員1名に対して各自で事前にインタビューをしてみてください。あてがない方は、他の方と共同でインタビューをしても構いません。その上で、KJ法のラベル案を各自、作ってきてください。 テーマ②はどなたにとっても真っ只中の問題でありつつ、明確な答えがないテーマということで選びました。自分なりに考えてみて、同じくKJ法のラベルを作るところまでを各自やってきてください。いずれも提出の必要はありませんが、必ず課題をしたうえで8月1日の授業に参加してください。 |
8/1(土) | 【共通テーマでKJ法を二回実践-jamboardを使用】 午後1-3時 テーマ①:大学教員にとっての教育と研究の関係 午後3-5時 テーマ②:コロナ禍は今後の大学にどのような影響を与えるか ※議論に集中したいので録画は行わないが、それぞれの班でまとめたKJ法の図解の成果物は写真に撮って、授業後にそれぞれストリームにアップする。同じテーマでどの程度の共通性や違いがみられるのか、受講生それぞれが確認する。 |
課題④⑤ | 【課題④】8月1日の授業のテーマ①でもテーマ②でもよいので、班ごとに図解化した内容について、文章化をしてください。提出〆切は、8月9日(日)23時まで。 【課題⑤】9月12日に向けた発表準備をしてください。それぞれの関心でインタビュー調査を行い、1人でKJ法をやってみて、その結果を報告する準備を進めてください。 |
9/12(土) | 【受講生による発表】課題⑤についての各自の発表(1人5分で発表、5分質疑) 10-17時を予定(オンラインのため、適宜、休憩を入れて進めます) 質問できなかった場合は、グーグルフォームに発表者へのコメント・質問を記入して後日共有します。 |
課題⑥ | 【課題⑥】9月12日に発表した内容を文章化して提出してください。 提出〆切は9月20日(日)23時まで。 |
【授業に都合により出られない人等への対応】
授業と仕事等が重なった場合、対面での授業への出席に不安がある場合などに、下記のような代替措置をとります。他の履修生と全く同じ経験まではできませんが、少なくとも履修上に不利にならないようにできる限りの配慮をしたいと思いますので、何か困ったこと、心配なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。
7月25日、9月12日(オンライン、発表)
他の受講生と同じ発表をZOOMで行い(1人で)、それを録画しておき、ストリームにアップすることで参加したとみなす。また、オンライン授業の様子も録画するので、見たい場合は、各自に、授業後にご確認いただけます。
7月26日(オンライン、講義)
授業の様子を録画するので、授業後に見て、リフレクションシートを提出してください。
8月1日(オンライン、演習)
予定が合わないものは個人でKJ法を立ち上げて、最終的な成果物を写真等に収めて、ストリームにアップする。
成績評価
・授業に出席し(代替措置も含め)、課題(②④⑥)をすべて提出した場合は、70点(良以上)は保証します。(やむを得ず欠席される場合は、担当講師までメールでお送りください。)
・それ以上の成績を付けるかどうかについては、提出物や発表内容の質、授業中の発言での貢献、コメントシートなどを総合的に考慮したうえで決定します。
・毎回の授業後にリフレクションシートを提出してください。授業の感想や要望・質問などを自由に書いてもらい、次の授業までに紹介・解説する等のフィードバックを行うのでご協力ください。これについては、マイナスの成績評価に用いませんので率直なご意見をお書きください。良いコメントを書いて、授業に貢献してくれた場合、プラスの評価にのみ用います。
以上