担当教員:福留東土(大学経営・政策コース)
教室:オンラインZoom
TA:杉本昌彦(大学経営・政策コース D3)
1.授業の概要
本授業は本来、海外の大学を訪問する集中講義である。本年度は米国・ペンシルバニア州立大学を訪問する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の拡大により、2020年10月時点で海外渡航の見通しが立たないため、今年度はオンラインで現地とつないだ講義を行うこととする。
授業の開講日程は当初、1週間の集中講義を予定していたが、これを変更し、主にA2期間(一部A1)にわたり、不定期に開講する。
授業はオンライン開講となるが、現地とは時差があるため、ライブ型とオンデマンド型を併用する。
講義日程:2020年10月~2月(不定期開講) 授業日時は決まり次第連絡する
オンラインでの主な講義依頼先:アメリカ合衆国ペンシルバニア州立大学ユニバーシティパーク・キャンパス(Pennsylvania State University, University Park)https://www.psu.edu/
2.授業の趣旨
本授業は、大学の比較研究に対する視野を醸成することを目的とする。今年度は、現地訪問はできないが、現地とつないだ講義を受け、米国の大学人とディスカッションすることを通して、米国の研究大学の制度と実態について学ぶ。それを通して、大学に関する比較考察の視点を獲得し、日本の大学のあり方について考察する上での示唆を得る。
アメリカの大学は世界の大学改革のモデルと位置付けられているが、その実態は実は十分に理解されていない。文化や制度的伝統の異なる海外の実態を、その背後にある文脈を含めて理解することは簡単な作業ではない。この授業では、まず予断を入れずにアメリカの大学の実態を理解しようとすることが重要である。その上で、受講生各自の関心に即して事前調査やレポート執筆を行うことを通して、比較の視点から日本の大学像を相対化し、大学に対する幅広い知見を獲得することを目指す。
今年度は、現在アメリカの大学に多大な影響を及ぼしているCOVID-19をテーマとする。COVID-19は世界の社会・経済・教育に甚大な影響を及ぼしている。各国の教育に対しても多方面で重大な影響が発生しているが、世界の中でとりわけ深刻な影響を受けているのがアメリカの大学である。
大学院授業で取り上げるテーマとしては異色だが、現在、現地の大学ではCOVID-19に伴って生じている現象への対応が最大の課題であり、今年度は現在進行中の動向をもとに議論を行うこととしたい。もっとも、COVID-19を巡る動向は現在進行形であり、その帰結を知ることが本授業の目的ではない。最新の動向であるいう点に加えて、COVID-19を授業テーマに設定する理由は以下の2点である。
① COVID-19は、大学の活動の多方面に本質的な影響を及ぼしており、今後の大学のあり方を転換させる要因となると考えられること。
② COVID-19は日本を含めた世界共通の課題であり、アメリカで生じている事態を通して、平常時には意識されにくかったアメリカの大学の特質、およびそれと比較した日本の大学の特質を理解する手掛かりになること。
受講生には以下のような観点について学んでもらいたい。
① COVID-19を巡って生じている動向とそれに対する大学の対応について理解すること。
② 大学による対応の背景にある目的、目指すべき理念が何かを考察すること。
③ 同じテーマに関する日本の動向を調べ、アメリカの状況との比較を行うこと。
④ 日米で違う現象が生じている場合、その現象の背後に日米のどのような特質があるのかについて思考すること。
3.講義テーマ(予定)
COVID-19が影響を及ぼしている主な領域を取り上げる。
1. 大学財政・人的資源
2. 授業のオンライン化
3. 学生の経済的支援
4. 留学生の受け入れ・国際化
5. アドミッションとエンロールマネジメント
6. 学生寮
以上に加えて、COVID-19を巡る公開セミナーを開催する予定なので、受講生はそれにも参加(またはビデオ視聴)すること。
すべての受講生が関心あるテーマを見出せるよう希望に応じるので、上記以外に関心あるテーマがある場合は連絡すること。
4.授業の進め方
① 現地講師の講義:原則としてオンデマンド型により行う。受講生は定められた期日までにビデオを視聴すること。1時間程度
② 受講生間のレビューとディスカッション・セッション(小グループによる確認と議論):30分程度
③ 現地講師とのディスカッション・セッション:30分~1時間程度
・ 次回授業は、福留による事前講義をオンデマンドにより配信する。10月下旬を予定
・ ガイダンスの感想と授業への要望をコメントシートにあとで記入すること
5.成績評価
期末レポート |
70% |
授業への貢献、発言とコメントシート |
30% |
・ 授業参加と期末レポートによって行う。
・ 期末レポートは原則として講義テーマの中から各自の興味関心に合わせてテーマ設定を行うこと。
・ レポートはタイトルを付し、A4(40×40)3~5枚を目安とする。
<参考:授業レポートについての考え方>
投稿論文などの学術論文を書く場合、定められた分量の中で目的と対象を明確に設定し、論理の通った実証的分析によって一定の結論を導き出す必要がある。これに対して、授業のレポートでは、限られた時間、資料の中で取り組むこともあり、完成されたものというよりも、自分なりに調べ、考えたプロセスを書くことが中心となる。明確な結論を導き出す必要は必ずしもない。調べる中で考えたこと、暫定的な見解、仮説、疑問に思った点、今後調べてみたいこと、調べる中で新たに関心を持った点など、自由度を持って書いて構わない。
ただし、自分がレポートを書く意図や問題関心を、できるだけ言葉にすることを意識すること。また、考え・書くプロセスにおける論理的思考が重要である。明確な結論はなくてもよいが、それについて考えたプロセスを自分なりの言葉で表現することが重要。すなわち、資料と時間が限られていても、可能な範囲で思考を深めようと心掛けることが大事である。また、時間を置いて、自分の書いたレポートを読み返すと、新鮮な眼で過去の自分を振り返ることができる。そうしたことを含めて、授業レポートを自分の思考を深める機会として活用してもらいたい。
6.受講生に求めること
・原則としてすべての講義とディスカッション・セッションに出席すること。
・期末レポートの提出を期日を守って行うこと。
・講義を理解するだけでなく、積極的に質問・コメントをすること。
・本授業には当コース修了生が参加する。相互に協力し合って、皆が有意義な経験をできるよう心がけること。
7.参考資料
事前に以下に目を通しておくこと
・ 連邦教育省のIPEDSによる大学の基本情報
http://nces.ed.gov/collegenavigator/?q=penn+state&s=all&id=214777
・ カーネギー大学分類 https://carnegieclassifications.iu.edu/
・ 福留東土「アメリカの大学における理事会とガバナンス―ペンシルバニア州立大学の事例―」『KSU高等教育研究』第3号、2014、97-111頁。
・ 広島大学高等教育研究開発センター「新型コロナウイルスをめぐる海外大学等の動向の掲載について」https://rihe.hiroshima-u.ac.jp/liaison-center/learning-center/
8.過去の講義資料
・過去の集中講義で扱った主なテーマ
ランドグラント・カレッジの歴史、ペンステートの歴史、ガバナンスとマネジメント、学士課程教育、財政、アドミッション、エクステンション、サービスラーニング、IR、国際化、大学同窓会、研究戦略・支援、オンライン教育、教員人事と管理者育成、教員評議会と共同統治、オナーズカレッジ、カレッジスポーツ、学生支援、学習支援、経済支援、学寮、学生エンゲージメント
9.その他
・ 英語力について
本授業では特段高い英語運用能力は要求しない。英語能力の巧拙によって成績評価を行うことはない。重要なのは相手の話を理解し、自分の言いたいことを伝えようとする姿勢であり、英語能力が履修の障害とならないよう必要なサポートを行う。現地講師にはできるだけ基本事項を中心に説明してもらうので、必要に応じて事前にウェブサイトを参照するなど、準備を行い、主要な用語等について一通りの理解を持った上で講義に臨むと理解しやすい。講義の通訳は行わないが、必要に応じてディスカッション・セッションで日本語での説明を行う。また、必要な場合は受講生の質問を通訳する。不明な点は遠慮せずに講師に質問すること。
・ 来年度は7月から8月に掛けて開講予定だが、コロナの終息次第。昨年度までのJASSO留学奨学金の継続を申請中。
・JASSO海外留学支援制度(協定派遣)について
採択プログラム名「グローバル化時代を支える大学経営プロフェッショナル育成プログラム」
<プログラムの概要(2018年度)>
本プログラムは、東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策コースの専門科目「比較大学経営論」として開講される。本プログラムでは、大学院生を海外大学に派遣し、現地の経営幹部、教員、専門スタッフと交流することで、グローバル化時代に対応した先進的な大学経営システムの知識修得、及び英語力の向上を図っている。現代日本の大学は、グローバルな展開を図ることによってそのポテンシャルを高めることが可能となる。同時に、グローバル化と市場化の中で共通の課題を抱える世界の大学と交流することで、新時代に相応しい大学経営のアイディアを交換し、プロフェッショナルとしての意識を高めることが重要である。大学経営・政策コースは、近年、専門職化の要請が高まっている大学管理者層やミドルマネジメント、高度な能力を持った大学内専門職の養成を使命とし、修士・博士課程で約50名の人材を受け入れ、育成を行っている。「比較大学経営論」は、2005年度のコース開設時から10年以上に渡り、毎年開講されている特色ある科目である。平成29年度は、米国ペンシルバニア州立大学において、大学財務、グローバル化戦略、学生支援、研究戦略、オンライン教育をテーマにプログラムを実施する。受入先である高等教育研究センターは、全米有数の高等教育研究者が多数在籍する研究拠点である。同センターが当コースとの協定に基づく受入を行い、センター教員に加え、同大学の経営幹部、教職員の協力を広く得る。
以上