担当:両角亜希子
TA:胡云潼、端希子
ゲスト講師:東京薬科大学特命教授・矢野眞和先生(7月24日、8月7日午後)
臨床心理学コース教授・能智正博先生(8月7日午前)
※ZOOMの場所などの必要な情報は、google classroomで指示する。
※シラバスの説明、インタビューの仕方についての簡単な解説は、事前ビデオを作成しましたので、授業開始までに各自ご覧ください。
授業の目的・ねらい
今年度の大学経営事例研究の授業では、質的なデータを収集し、それを分析する方法について、実践をしながら学ぶことを目的としています。量的な分析と質的な分析はそれぞれに強みと弱みがあり、それらを組み合わせることで、問いに対してより深い理解が得られることも多く、様々な分析手法を身につけることはとても重要です。大学経営・政策コースでも、インタビュー等の質的データを用いて、修士論文・博士論文を執筆する方は少なくないですが、収集したデータをどのように整理・分析して、論文にしていくのか、というところで悩みを抱える方が少なくありません。量的な方法と異なり、研究枠組みや仮説が最初からあるわけでなく、流動的であるため、その探索的な過程を楽しむというよりも不安に感じる方も多い印象を受けています。
質的データの方法論については、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)、エスノグラフィー、ナラティブ分析などの様々な手法が開発されてその解説本も多く出ていますが、一部ではやや技術的な工夫に片寄りすぎて、かえって使い勝手が悪い方法論もあるように感じています。質的な分析の基礎は、インタビューで得た発話を文字にして、それらをうまく言い表す名称や文句を抽象化してラベルを貼ることを通して、何らかのパターンを見出すコードをふり、類似したコードでカテゴリーを作り、それらの関係性などについて、カテゴリー/テーマをつなげ、データを説明するストーリーを構築するというところにあると考えます。また、この手の手法は実践してみて、獲得していくことがとても重要だと考えます。そこで、本授業では、古典的な手法ともいえるKJ法(言葉の組み立て工学)に着目して、それを実践してみることで、質的な方法論についての理解を深め、実際に使えるようになることを目指します。
授業の日程(7/23、7/24、8/7、9/4)
・課題
授業全体のスケジュールは下記の通り。授業は上述の4日間で行うが、それ以外の事前・事後の課題をすべて行うことで、高い効果があげられると考えますので大変ですが、頑張ってやってください。授業の日は授業後に、リフレクションシートを提出してもらいます。
課題①② | 【課題①】課題文献2冊(川喜多二郎『発想法』)、上野千鶴子『情報生産者になる』)を読む。読書メモのようなものの提出は求めないが、読んでいることを前提として授業を行う。昨年の事例研究の授業での矢野眞和先生の講義動画を見ておく。「言葉の組み立て工学」・KJ法についてわからないことは7月24日の授業で質問ができるように準備しておく。 【課題②】インタビューを用いて書かれた論文(1本)について探して読み(テーマは高等教育に限らなくてもよい)、下記の点についてまとめ、7月23日の授業で発表できるように準備する。①~③は大学経営政策研究で行っているのと同じ作業。7月22日の昼12時までにgoogle classroom提出。 ① 問題意識・関心を、具体的な問いや明らかにしたいことに、先行研究を組み込みながら、どう落とし込んで設定しているか。 ② 設定した問いに相応しい方法の選択や、データ・資料の収集・加工がどのようになされているか。 ③ 設定した問いに対して、用いた方法を通して、どのように説得的かつ分厚い考察・解釈を行っているか。 ④ 質的方法を採用したことのメリットはどこにあるか。分析や解釈の面でどのような点が参考になったのか、あるいは疑問が残った点は何か。 |
7/23(金・祝) @ZOOM | 【受講生による発表】課題②についての各自の発表(1人7分程度で準備してください) 午後1時~5時 ※全員が発表すると時間がかなりタイトで議論ができなくなりますので、班ごとに分けて紹介しあって、議論してもらうスタイルを考えています。 ※KJ法以外の様々な質的方法について、どういうものがあるのかについての、ごく簡単な解説も行う予定です(時間が無くなったら、あとで録画教材をアップする形になるかも) |
7/24(土) @A200 | 午後1時~午後5時【A200/A208で班別に分かれて共通テーマで二回実践】 「言葉の組み立て工学の実践」※矢野先生にも同席いただき、適宜質問に回答いただく 午後1-3時 テーマ①:大学経営・政策コースの将来のあり方・望ましい姿は 午後3-5時 テーマ②:社会人が大学でもっと学ぶようになるためには ※事前の準備は必要ありません。皆で議論して、班ごとにやってもらいます。 ※班ごとの結果はTAが写真にとって後で共有します。 |
課題③ | 【課題③】8月7日の授業では、それぞれが事前にインタビューをしてきたうえで、その発言をKJ法にまとめます。 インタビューテーマ:大学教員の望ましい人事評価のあり方とは 教員に対して、それぞれ1名ずつ、各自で事前にインタビュー(オンラインでも対面でも可、先方の希望など可能な範囲で実施)をしてみてください。聞きやすい身近な方にお話を聞いてみるというのでも、これを期に話をしたことのない人に聞いてみるというのでもOKです。どうにも全くあてがない方は、他の方と共同でインタビューをしても構いません。インタビューのメモとKJ法のラベル案を各自、作ってきてください。 |
8/7(土) @A200 | 午前10時~午後4時 午前10-12時 能智先生による特別講義 午後1時-4時(昼休みは長めにとるかもしれません) 課題③(テーマ:望ましい人事評価のあり方)をもとに、「言葉の組み立て工学の実践」 班ごとの実践・発表 (※矢野先生にも同席いただき、適宜質問に回答いただく) |
課題④⑤ | 【課題④】7月24日に行ったテーマでも8月7日に行ったテーマでもよいので、班ごとに図解した内容について、文章化をしてください。文章化をする過程で、図解をやり直したくなることもあると思いますが、ウェルカムです。 文章と図解の両方を必ず提出すること。図解はjamboardやエクセルなどでまとめてもよいし、手書きでポイントをまとめたものを写真にとってもらってもよいです。 提出〆切は、8月15日(日)23時まで。 【課題⑤】9月4日に向けた発表準備をしてください。それぞれの関心でインタビュー調査を行い、1人で「言葉の組み立て工学」をやってみて、その結果を報告する準備を進めてください。提出締め切りは9月3日(金)昼12時まで。 |
9/4(土) | 【受講生による発表】課題⑤についての各自の発表 午前10時~午後5時 午前10時から開始(適宜、休憩をはさみながらやるが、遅くとも17時には終えたい…) |
課題⑥ | 【課題⑥】9月4日に発表した内容を文章化して提出してください。 提出〆切は9月20日(月)23時まで。 |
【提出課題の全員への共有】
なお、提出してもらった課題については、TAの方にファイルをくっつけてもらって、履修者全員に共有します。同じテーマで一緒に図解してみても、その後の文章化の仕方は個人によって異なっていたりもします。「これはうまいなあ」というのを目の当たりにしてもらうのもよい勉強になりますので、提出物の共有についてご理解ください。
【授業に都合により出られない人等への対応】
授業と仕事等が重なった場合、対面での授業への出席に不安がある場合などに、下記のような代替措置をとります。他の履修生と全く同じ経験まではできませんが、少なくとも履修上に不利にならないようにできる限りの配慮をしたいと思いますので、何か困ったこと、心配なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。
体調がすぐれない場合などもあるかもしれませんので、そういう場合はご無理をなさらずにご相談ください。まずは体調第一です。
7月23日、9月4日(オンライン、発表)
他の受講生と同じ発表をZOOMで行い(1人で)、それを録画しておき、ストリームにアップすることで参加したとみなす。また、オンライン授業の様子も録画するので、見たい場合は、各自に、授業後にご確認いただけます。
7月24日、8月7日(基本は対面だが、希望者はオンライン参加)
オンライン希望者だけでZOOMを立ち上げて、KJ法を実践する。成果物は授業後にストリームにアップする。
予定が合わないものは個人で同様の作業を行い、最終的な成果物を写真等に収めて、ストリームにアップするのでもよい。ZOOMで録画したものを発表してもよい。
※8月7日は講義(一部演習)で、授業の様子を録画するので、欠席した場合は、授業後に見てもらう。
成績評価
・授業に出席し(代替措置も含め)、課題(②④⑤⑥)をすべて提出した場合は、70点(良以上)は保証します。(やむを得ず欠席される場合は、担当講師までメールでお送りください。)
・それ以上の成績を付けるかどうかについては、提出物や発表内容の質、授業中の発言での貢献、コメントシートなどを総合的に考慮したうえで決定します。
・毎回の授業後にリフレクションシートを提出してください。授業の感想や要望・質問などを自由に書いてもらい、次の授業までに紹介・解説する等のフィードバックを行うのでご協力ください。これについては、マイナスの成績評価に用いませんので率直なご意見をお書きください。良いコメントを書いて、授業に貢献してくれた場合、プラスの評価にのみ用います。
以上