土曜 3限(13:00-14:45)・4限(14:55-16:40)
場所:回により、ハイフレックス(対面&オンライン)、オンラインのみのことがある
- 対面の場合は、赤門総合研究棟2階 A200教室
- オンラインはZOOMを使うが、場所は毎週変更する(google classroomで案内)
担当
講師:両角 亜希子
授業の目的・ねらい
大学経営論では、大学の組織、経営行動について基本的な知識を習得するとともに、その現代的な課題について各自の問題意識を発展させることを目的とする。
大学経営という分野は、理論と実践の往還がきわめて重要であり、毎年度の授業ではこの観点を重視して授業を設計している。自らの経験や授業の中で取り上げる具体的な事例について分析し、議論をしつつ、既存の理論や研究からどのようなヒントが得られるのかを、それぞれに探ってもらうことが重要である。今年度は、講義のみならず、事前課題を行ったうえでの議論、ゲスト講師を迎えての議論、ケースメソッドなど、様々な方法を用いて授業を行う。積極的に参加してほしい。また、正解がひとつしかない、といったテーマでもないため、それぞれにとってのよりよい解を見つける機会になればと考えている。
講義日程と内容
以下の内容を予定している。大学経営に関するテーマは、非常に多岐にわたり、毎年、そのごく一部しか扱えないが、個人での研究を同時に進めてもらうことでそれぞれの関心にあった知見と考察を深めてもらう。
授業は基本的に録画して授業後に配信する予定(ただし、グループ討議は録画されることで、自由・闊達なディスカッションが妨げられる懸念があるので、充実した議論を優先し、録画しない)。仕事・体調不良等で結成した場合は、録画を見てリフレクションシートを提出することで出席とほぼ同等とみなす。オンライン参加の場合、講義の部分では画面はオフにして良いが、議論をする場合は、可能な限り、画面はオンでお願いしたい。表情の見えない相手と活発な議論はしづらいので、授業の狙いと特性を理解の上、協力いただきたい。もし発言を録画されたくない場合は、発言する前に、TAに録画を一時停止するようにお願いすること(後で言われても対応不可)。
3限・4限の連続授業なので、適宜、休憩をはさみつつ行うが、議論の進行状況を見つつ休憩を入れるため、時間割上の休憩時間とは少しずれる可能性がある。
回 |
日にち |
テーマ |
|
1 |
4/8 3限 |
ガイダンス |
授業の進め方・自己紹介・簡単なイントロ |
2 |
4/15 3限 |
組織論 |
課題①をもとに、ケースメソッドによる授業 |
3 |
4限 |
〃 |
課題②をもとに、ケースメソッドによる授業 |
4 |
4/22 3限 |
私大の公立化 |
課題③をもとに、討議 |
5 |
4限 |
〃 |
講義、議論 ゲスト講師:中田 晃先生(公立大学協会) |
6 |
4/29 3限 |
組織論 |
課題④をもとに、ケースメソッドによる授業 |
7 |
4限 |
〃 |
課題⑤をもとに、ケースメソッドによる授業 |
8 |
5/6 3限 |
女子大 |
課題⑥をもとに、討議 |
9 |
4限 |
〃 |
議論+解説 ゲスト講師:三井知代先生(神戸親和大学 学長) |
10 |
5/13 3限 |
業務改革 |
課題⑦をもとに、討議 |
11 |
4限 |
〃 |
講義、議論 |
12 |
5/20 3限 |
各自のテーマ |
課題⑧ 学生発表① |
13 |
4限 |
〃 |
学生発表② |
5/31締め切り |
最終課題 |
5/22の発表をブラッシュアップし、文章化 |
※5月13日は五月祭の日だが、オンラインのみで授業を行う。
5月27日の授業は行いませんので、最終レポートの作成に充ててください。
場所について
・文字通りクラス全体で議論をする予定の日(★印)はオンラインのみで実施予定。
教室の学生とパソコン上の学生を両方一度に目を配り、良いタイミングで挙手した学生を指名して、活発な議論をすることが難しいため、ハイフレックスで行うが、全体討議をする場合は、対面を推奨している(もちろん体調、仕事等の都合でオンライン参加しかできないこともあるので、その場合は無理せずオンラインでどうぞ)。ただし、オンライン受講の場合は、発言しようとしていることに、私がどうしても気が付きにくいので、より積極的に発言したいことを伝えてほしい。
・ゲスト講師はお二人とも教室で講義をしていただける予定。
・学生による発表は、オンラインでも対面でも授業効果の点ではあまり差はない。(ただし、授業後のインフォーマルなやり取りが対面ではできるが、オンラインではできない限界はある。)
課題
・毎週の授業では課題を課す。量が多くて大変だと思うが(コロナを機に課題が増えたわけでなく、もともと課題が多い方の授業である)、教育効果を上げるためには一定のインプットや事前作業が不可欠であるため、理解と協力をお願いしたい。
・締め切りは、授業前日(金曜日)の朝10時。課題はいずれもgoogle classroomで提出すること。
・ファイル名は「課題①(名前).pdf」という形で提出すること。必ずPDFファイルで提出すること。
・なお、課題については、基本的に教員のみならず、受講生全員に共有する。同じテーマ、課題に対しても、様々な考え方や捉え方があることを実感できる。この授業は教師から学生が一方的に学ぶのではなく、多様な経験や背景を持つ学生が集まっており、学生同士が刺激し合い、学び合うことをとても大事にしている。ただし、テーマや内容によっては共有してほしくないものもあることは理解できるので、「共有不可」とファイル名と文書の最初に明記すること。
・大学勤務でない方も一定数、受講されるので、自大学や自身の経験をもとに調べたり、発表したりするというよりは、できるだけ共通の事例をもとに議論するように授業を設計している。同じ事例を題材に議論をしても、それぞれの背景や経験の違いによって、捉え方や感じ方は様々であり、そのこと自体が、大学という複雑な組織を多角的に理解するうえで役立つと考えている。
・各課題についての詳細は以下の通り。
課題①②④⑤
中島英博2019『大学教職員のための大学組織論入門』ナカニシヤ出版のテキストを用いる。
4/15 課題①は5章(組織文化)、課題②は7章(意思決定)
4/29 課題④は6章(組織と環境)、10章(組織学習)
該当の章を読んで、ケーススタディを読み、「論点」に書かれた設問に対するあなたの考えをA4 1枚程度にまとめる。
課題③ 私立大学で公立化した事例(既に公立化したものだけでなく、計画中のものでもよい)について、1つの事例を選んで、下記の点を中心に分析・考察する。分量、形式はワード、パワーポイントでもよい。
・大学の基本情報(設置年、設置主体、立地、設置学部、学生規模等)
・公立化したきっかけ、その後
・その事例の公立化をどう評価するかのあなたの考え
・その事例を調べてもよくわからなかった点
下記なども参考になるが、それぞれの事例のホームページ等を直接、確認すること。
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kouritsu/1412396.htm
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/700/735/42315/d059441_d/fil/siryou7-2.pdf
課題⑥ 恵泉女子学園大学が募集停止、廃止することになったが、女子大学の募集状況は厳しさを増していると言われている。具体的に事例を一つ選んで(日本国内に限らなくてもよい、恵泉女子学園大学の分析をしてもよいが、できるだけ多様な事例を持ち寄って議論したい)、下記の点を中心に分析・考察する。分量、形式はワード、パワーポイントでもよい。
なお、5/6の授業では、2023年4月から共学化した神戸親和大学の三井学長にお話をしてもらいますので、あらかじめ調べて、聞いてみたいことを考えて、授業に臨むとよい。
・大学の基本情報(設置年、設置主体、立地、設置学部、学生規模等)
できれば現時点だけでなく、中長期の変化も追うこと
・他大学と比較した際のその事例の特徴・強みと弱み
・募集状況や(わかるなら)財務状況の推移
・あなたがその大学の経営者だった場合に、どのような方策をとるのか
課題⑦
5/13の授業では、3限は架空のケースを事例としたケースディスカッション、4限では2023年2月に東京大学 大学経営政策研究センターで実施した「全国大学事務局長調査」の結果を紹介して、議論する。ケースを読んで、ディスカッション設問に対する考えをA4 1枚程度にまとめてくること。
課題⑧ 大学経営に関して(ご自身の研究テーマを考え、深める機会として、広めに捉えていただいてOK)、あなたが知りたい、深めたいと思うテーマについて、論文・書籍・報告書などを読んで/あるいは具体的な事例を分析して、その内容を発表してください。どのようなテーマを扱えばよいか、どのように進めたらよいかは、個別に相談に乗るので、相談を希望する場合は、4月中にはご連絡ください。
今年度は教室にてポスター発表ツアー方式で、発表をして、相互に質疑をできる方式で実施するので、パワーポイントで、ポイントを絞って、簡潔に発表内容をまとめること。
最終レポート(課題⑨)
・課題⑧に関する内容を、文章化する。分量は特に定めない。自分の考えていることを口頭発表で終わらせずに、言語化しておくことはとても大切である。もやもやしていて言語化ができない状態のこともあるが、もやもやしているなりに言語化しようとしないと考えは明確にならない。書くこと自体が思考のプロセスでもあり、後から自分の考えを見直すことができる利点もある。
・(1)内容を示す適切なタイトル、(2)どのようなことに関心があり、(3)どのような知識を学び/どのような事例を実際に検討してみて、(4)そこから何を考え、学んだのか、という観点を必ず入れること。
・締め切りは、5月31日。
リフレクションシート(RF)
・毎週の授業後、翌日中に(日曜日23:59)、授業の感想、質問を書いて提出すること。A4 1枚程度でよい。
・リフレクションシート(+両角からのフィードバック)も基本的に受講学生の間で共有する。内容によって共有してほしくない場合は、「共有不可」とファイル名および文書の最初に明記すること。
・ファイル名は「日付RF(名前).pdf」という形で提出すること。必ずPDFで提出。たとえば、4/8 RF両角.pdf(共有してほしくない場合は、【共有不可】4/8 RF両角.pdf)といった感じで。
成績評価
・課題をすべて提出した場合は、70 点(良以上)は保証します。(やむを得ず欠席される場
合は、担当講師までメールでお送りください。)
・それ以上の成績を付けるかどうかについては、提出物や発表内容の質、授業中の発言で
の貢献、最終レポート、リフレクションシートなどを総合的に考慮したうえで決定します。リフレクションシートについては、マイナスの成績評価に用いませんので安心して率直なご意見をお書きください。良いコメントを書いて、授業に貢献してくれた場合、プラスの評価にのみ用いることがあります。
参考文献
毎回の講義の際などに適宜、指示する。
授業では扱いきれませんが、以下の書籍は大学経営について理解する上での重要な文献だと思います(もちろん他にも多数の文献はありますが)。ご自身の関心のある所だけでも読むとよいです。
東京大学 大学経営・政策コース2018『大学経営・政策入門』東信堂
中島英博2019『大学教職員のための大学組織論入門』ナカニシヤ出版
両角亜希子編著『学長リーダーシップの条件』東信堂
小方直幸編著『大学マネジメント論』放送大学教育振興会
両角亜希子2020『日本の大学経営-自律的・協働的改革をめざして』東信堂
ロバート・バーンバウム1992『大学経営とリーダーシップ』玉川大学出版部
バートン・クラーク(有本章訳)1994,『高等教育システム――大学組織の比較社会学』東信堂
Becher, T. and Kogan, M., 1992, Process and Structure in Higher Education (second edition), London: Routledge.
Kezar, Adrianna,2018, How Colleges Change- Understanding, leading, and Enacting Change-(2nd Edition), Routledge.
Bess, J.L. and Dee, J.R. (2008) Understanding college and university organization: Theories for effective policy and practice. Sterling. VA: Stylus.
また、高等教育に関しては、以下のような学会誌・学術誌があります。
『高等教育研究』『大学教育学会誌』『大学行政管理学会誌』『大学論集』等
また、様々な情報や事例は、たとえば下記の雑誌で見ることができます。定期的に内容をチェックして読む癖をつけるとよいかと思います。
リクルート『カレッジマネジメント』(WEBで閲覧可能)
進研アド『Between』(WEBで閲覧可能)
私学経営研究会『私学経営』
国立大学マネジメント研究会『大学マネジメント』
IDE大学協会『現代の高等教育』
日本私立大学連盟『大学時報』
大学基準協会『大学評価研究』『大学職員論叢』
ジアース教育新社『文部科学教育通信』等
履修上の留意点・お願い
・履修者自身による事前作業等はそれなりに多いです。十分な準備をすることで、学習効果が高まるので、それをよく理解し、準備したうえで、積極的に授業に参加してください。
・グループや全体での議論、ケースディスカッションなど、討議を通じた学びが多いタイプの授業です。よりよい学習の場を作るのは、教員だけでなく、受講者自身です。そのため、以下の5つの約束を守ってください。受講者全員が約束を守ることで、信頼関係が構築され、安心して発言がしやすい、良い学びの環境・共同体が徐々に作られていきます。そして、それが高質で満足度の高い議論につながることを理解してほしいと思います。
当コース以外からも履修する学生がいる場合は、この授業の自己紹介シートを授業履修者全員で作って共有する予定ですので、その場合もご協力をお願いします。
- 自分の考えを大勢の人に向けて発するには勇気がいりますが、ぜひ勇気をもって発言してください。1回の授業で最低1回は発言しようとか心掛けてもらうとよいと思います。また、建設的な反論も真の学習に欠かせないので、言い方の工夫は必要になるかもしれませんが、対立意見をいうのも避けないでください。
- 履修者同士が互いに協力し、他のメンバーに対して、礼儀や敬愛の精神で接してください。それがあれば、たいていは「話してよかった」という結果になります。
- 自分の立場や考え方とは異なるものも受け入れる姿勢・態度(寛容の精神)を持って、議論してください。
- 授業の中では、勤務先大学について話したりすることが多くなりますが、この場で得た情報を他で漏らさないようにお願いします。
- 議論する内容によっては、語りたくないこともあるかもしれませんが、その場合は無理に発言しなくても構いません。安心して授業に参加してもらえればと思います。
以上