担当教員:福留東土、両角亜希子(大学経営・政策コース)
TA:中里祐紀 D3(大学経営・政策コース博士課程)
吉田翔太郎 D1(大学経営・政策コース博士課程)
<授業の目的>
多様性と包摂性は近年、大学経営の中で重視されるようなった概念であり、特に日本の大学において急速に普及しつつある。しかし、大学におけるその意義やどのようなインパクトを大学にもたらしうるのかについては、まだ議論が十分ではなく、さらなる理解の促進を図ることが必要な段階にある。この授業では多様性と包摂性について、理論と実践の両面から捉え、受講生による理解を深める。教育学研究を志す大学院生、大学職員、経営・政策担当者などの実務者らが、多様性と包摂性に関する理念的・実践的な理解を深め、それぞれの立場を活かして、多様な観点に立って知見を学び合うことを目的とする。
大学における多様性と包摂性を考える上で、そもそも多様性と包摂性とは何を意味し、何を目的に実現が図られようとしているのかについて考えを深めることが不可欠である。そのため、本授業では、多様性と包摂性を大学内部の問題に限定せず、幅広く捉える。その中から、各人なりの多様性と包摂性に対する視座を養ってもらいたい。
<キーワード>
多様性、包摂性、大学経営、社会的公正、キャンパス環境
Diversity, Inclusiveness, Higher Education Management, Social Equity, Campus Climate
<授業形態>
担当教員、ゲスト講師による講義を行うが、これらはできるだけ少な目にし、またはオンデマンド学習を通じた反転学習を活用する。授業全体として、事前の文献購読、および授業時間における受講生間のディスカッションを重視する。積極的かつ楽しくディスカッションに参加してほしい。
また、毎週の授業は原則としてハイフレックスで行うので、対面でもオンラインでも受講可能であるが、できるだけ対面での受講を推奨する。
授業資料の配布、課題の提出、諸連絡にGoogle Classroomを活用する。
<履修に当たって>
この授業では多様な背景を持った学生たちが集まるものと想定される。小グループ編成の際もできるだけ多様なメンバー構成となるよう配慮する。多様性を理解する上では、自身と他者の個性を認識・理解するとともに、それを尊重する姿勢を持つことが重要である。また、クラスメートの相互に異なる背景、経験、専門分野、国籍・文化、年齢などを、対話を通して活かしながら、この授業自体を多様性と包摂に関する実践の場としたい。それを通して、大学における多様性と包摂に対する理解も深まるはずである。
<授業の編成>
主なテーマ
- 大学における多様性と包摂を考える視座
- 対話において多様性と包摂を実現する方法
- 組織における多様性と包摂
- 社会課題と学問の多様性
- 大学経営における多様性と包摂
第1回 |
4月8日 |
導入講義(福留) |
第2回 |
4月15日 |
アメリカの大学を通してみる多様性と包摂(福留) |
第3回 |
4月22日 |
哲学対話を通した多様性と包摂① |
第4回 |
5月6日 |
哲学対話を通した多様性と包摂② 企業組織における多様性と包摂① |
第5回 |
5月13日 |
企業組織における多様性と包摂② (※カレンダー上は休講だがオンラインで開講を予定) |
第6回 |
5月20日 |
多様性が導く教育のイノベーション ゲスト講義:ヤング吉原真理子氏(スタンフォード大学)「STEAM教育と次世代人材育成」 |
第7回 |
5月27日 |
音楽・アートと学問・人間 ゲスト講義:平田真希子氏(スタンフォード大学)「音楽・アートを通したウェルネス」 |
第8回 |
6月3日 |
キャンパスにおけるサステナビリティ実現と学問的多様性:アメリカの事例(福留オンライン参加予定) |
(休講) |
6月10日 |
(高等教育学会大会のため休講) |
第9回 |
6月17日 |
データからみる日本の大学のダイバーシティ・マネジメント①(両角) |
第10回 |
6月24日 |
データからみる日本の大学のダイバーシティ・マネジメント②(両角) |
第11回 |
7月1日 |
国際・異文化間教育を通してみる多様性と包摂 『多様性との対話:ダイバーシティ推進が見えなくするもの』の購読と議論 |
第12回 |
7月8日 |
ゲスト講義:「東大におけるD&I/GX」 |
第13回 |
7月15日 |
アメリカにおける人種・民族の多様性と教育 『われらの子ども―米国における機会格差の拡大』の購読と議論 |
※6/3、6/17、6/24は学会大会の関係で時間変更の可能性がある。決まり次第連絡する。
購読文献(予定:追加の可能性あり)
<導入>
福留東土「研究から探究へ発想を転換し多様性と包摂性を備えた高等教育を」『先端教育』2021年12月号。
<哲学対話>
梶谷真司『考えるとはどういうことか:0歳から100歳までの哲学入門』幻冬舎、2018年。
<企業組織におけるダイバーシティ>
佐藤博樹・武石恵美子・坂爪洋美『多様な人材のマネジメント』中央経済社、2022年。
谷口真美『ダイバーシティ・マネジメント―多様性を活かす組織』白桃書房、2011年(第2版)。
尾崎俊哉『ダイバーシティ・マネジメント入門―経営戦略としての多様性―』ナカニシヤ出版、2017年。
<社会・教育におけるダイバーシティ>
ヤング吉原麻里子・木島里江『世界を変えるSTEAM人材:シリコンバレー「デザイン思考」の核心』 朝日新書、2019年。
岩渕功一編『多様性との対話:ダイバーシティ推進が見えなくするもの』青弓社、2021年。(電子ブックへのリンク:https://kinoden-kinokuniya-co-jp.utokyo.idm.oclc.org/u-tokyo/bookdetail/p/KP00045055)
ロバート・D・パットナム(柴内康文訳)『われらの子ども―米国における機会格差の拡大』創元社、2017年。
映画『黒い司法』2019年、『フィラデルフィア』1994年。
ユネスコ「文化的多様性に関する世界宣言」 https://www.mext.go.jp/unesco/009/1386517.htm