授業・履修情報

2024年度シラバス

比較大学経営論(2)

担当教員:福留東土(大学経営・政策コース)

 

  1. 2024年度比較大学経営論の概要

渡航先:アメリカ合衆国ペンシルバニア州立大学(Pennsylvania State University、ペンシルバニア州ステートカレッジ) https://www.psu.edu/

開講期間:2024729日(月)~82日(金)

 

  1. 科目の趣旨

本授業は海外の大学を訪問する集中講義である。大学経営・政策コースが開設された2005年度から毎年開講されてきたコースの特色をなす科目である。

 本授業は、大学の比較研究に対する視野を醸成することを目的とする。現地で講義を受け、米国の大学人とディスカッションすることを通して、米国の研究大学の制度と実態について学ぶ。それを通して、大学に関する比較考察の視点を獲得し、日本の大学のあり方について考察する上での示唆を得る。

 日本では、アメリカの大学は世界の大学改革のモデルと位置付けられているが、その実態は実は十分に理解されていない。文化や制度的伝統の異なる海外の実態を、その背後にある文脈を含めて理解することは重要な作業である。この授業では、まず予断を入れずにアメリカの大学の実態を理解しようとすることが重要である。その上で、受講生各自の関心に即して事前・事後調査やレポート執筆を行うことを通して、比較の視点から日本の大学像を相対化し、大学に対する幅広い知見を獲得することを目指す。

 

※なお、この科目はコース内の措置により、大経コース修了生も聴講可能な科目となっている。

 

  1. 講義テーマ

学士課程教育・学生支援を中心に受講生の関心に応じて他のテーマでセッションを編成する予定である。

アメリカの大学教育は、歴史的に「親代わり政策」を理念としており、学生の人格的成長とその支援を大学の使命の中核に置いてきた。また、アメリカの学生層は非常に多様であり、多様な背景、特性を持つ学生たちの学業的達成、社会的成功を後押しするために、それぞれの大学で様々な施策と支援が展開されている。とりわけ近年は、社会の変化に即して浮上する新たな社会課題に対応すべく、組織編成や教育プログラム編成などについて多くの試行錯誤がなされている。学生の成長と成功を目的とし、学生中心主義による学士課程教育と学生支援の編成がどのように行われているのかを主要な視点としつつ、現地を見ることで、理論的かつ体験的な理解につなげてもらいたい。

全体の軸となるテーマを据えつつも、すべての参加者が関心あるテーマを見出せるよう、希望に応じてそれ以外のテーマの設定を検討する。各自の関心のあるテーマに関する理解を深める機会としてもらいたい。

 

 

<予定している講義テーマと講師>

 

以下のセッションは過去の講義ビデオを活用し、現地でQ&Aセッションおよび施設見学を行う。

上記以外に、テーマについて理解を深めるため、過去の講義ビデオをいくつか活用する。事前に視聴しておくこと。

 

※上記以外に関心あるテーマで講義の編成を希望する場合、5/7を目途に福留までメールで連絡すること。全体の希望を見てセッションの開設を検討する。適宜、相談すること。

 

(参考)上記以外に過去のペンステート集中講義で扱ったテーマ

ガバナンスとマネジメント、財政、エクステンション、サービスラーニング、準正課、IR、国際化、大学同窓会、研究戦略と研究支援、産学連携、オンライン教育、教員人事と管理者育成、教員評議会と共同統治、カレッジスポーツ

 

  1. 履修登録・開講時期について

 本授業はS2学期の開講科目であるため、4月および6月に履修登録を行うことが可能である。6月の履修登録時まで履修の最終判断は待つが、下記JASSO留学奨学金(1人当たり8万円を支給)を受給する場合は、5/9までに登録が必要なため、受給希望者はGW明けの57日までに連絡すること(連絡方法は別途知らせる)。その時期までに履修の可否が固まらない場合は個別に連絡すること。

 受講を検討している学生たちのインフォーマルな情報交換会を427日(土)19時から行う(対面+オンライン)。渡航に関する質問などを持ち寄ること。また、それ以前でも、福留への直接の相談(口頭、メール)、Classroomのストリームへの関連情報の提供を歓迎する。

なお、履修登録後に渡航が不可能となった場合は、成績上は「未受験」扱いとするので成績に影響はない。履修可能性が高い場合は4月時点で履修登録を行うことを勧める。

 

  1. 現地訪問スケジュール
  • 航空便、宿泊場所は各自手配するが、デフォルトとなる日程を2つ定める。各自の都合に応じて旅程や渡航日程をずらすことは問題ない。
  • 下記の通り、JASSO奨学金の支給を希望する場合、8日以上の滞在が必要。

 

モデル旅程

7/27(土)日本出発、ワシントンDC経由で空路でステートカレッジへ

7/29(月)~8/1(木) 現地での講義

8/3(土)ステートカレッジ発、空路でワシントンDCDCから東京

8/4(日)日本到着

 

予備旅程

7/27(土)日本出発、ニューヨーク到着

7/28(日)ニューヨークからバスでステートカレッジへ移動

7/29(月)~8/1(木) 現地での講義

8/2(金)ステートカレッジからバスでニューヨークへ移動

8/3(土)ニューヨーク出発

8/4(日)日本到着

 

航空便

(以下は7/27日本発、8/3アメリカ発で4/6時点の検索結果)

東京―NYANA系、JAL系とも31万円

東京―ワシントンDCIAD)―ステートカレッジ(SCE):ANA31万円+United25千円

東京―シカゴ(ORD)ーステートカレッジ(SCE):ANA31万円、JAL29万円+United8万円

 

※日程や乗り継ぎなどにより価格が変わることがあるので、渡航予定者からの情報提供をお願いします!

 

宿泊

大学近隣のホテルで、21室で1人当たり1泊約1万円

 

  1. 事前・事後学習会
  • 事前学習会

6月以降、数回開催予定。受講者確定後、日程調整を行う。

 

また、7月上旬、College of Education教授のDr. Gerald LeTendreが来日予定。比較・国際教育またはICT教育をテーマにセミナーを開催予定。現地でも交流する予定なので受講予定者はできるだけ参加すること。

https://ed.psu.edu/directory/dr-gerald-letendre

 

  • 期末レポートと事後学習会

受講者は、集中講義終了後、9月上旬までに期末レポートを執筆する。その発表会としての事後学習会を9月中旬から下旬にかけて行う。日程については追って調整する。

 

  • 他の授業科目との関係
    • 2024年度A2タームの集中講義として1月下旬に異文化間教育をテーマとする科目をスタンフォード大学およびカリフォルニア大学バークレー校で開講予定(この科目の開講はほぼ確定)。また、A1A2タームの通常科目としてスタンフォード大学SPICEの協力を得て異文化間教育をテーマとする科目を開講予定(この科目はまだ検討中)。いずれも学校教育高度化・効果検証センター(CASEER)が開講する科目として、福留および岩渕和祥助教(CASEER)が担当する予定。
    • 本授業受講者は合わせて、S1S2科目の大学経営政策各論(3)A1A2の比較大学論の履修を推奨する。

 

  1. 受講生に求めること
  • 原則としてすべての事前・事後学習会、講義に参加すること。
  • 準備を行った上で講義に臨み、現地のセッションでは講義を聴くだけでなく、積極的に質問・コメントをすること。
  • 期日を守って期末レポートを提出し、事後学習会での発表を行うこと。
  • 集中講義が全受講生にとって有意義な経験となるよう、受講生間で情報交換を図り、協力し合うこと。
  • 通常授業と異なり、授業の円滑な遂行には受講生全員の協力が必要となる。他の受講生と協力し合って各自の役割分担を果たすこと。

 

  1. 英語力について

本授業では特段高い英語運用能力は要求しない。英語能力の巧拙によって成績評価を行うことはない。重要なのは相手の話を理解し、自分の言いたいことを伝えようとする姿勢であり、英語能力が履修の障害とならないよう必要なサポートを行う。現地講師にはできるだけ基本事項を中心に講義をしてもらうので、事前に十分な準備を行い、主要な用語等について一通りの理解を持った上で講義に臨むと理解がしやすい。講義中の通訳は原則として行わないが、必要に応じて日本語での補足説明を行う。また、必要な場合は受講生の質問を通訳する。不明な点は遠慮せずに講師に質問すること。

 

  1. 留学奨学金の受給について

本授業は、日本学生支援機構の海外留学支援制度(協定派遣)に採択されている。受講者(日本国籍の正規大学院生に限る)は渡航に際し、一定額の経済支援を受けることができる。ただし、8日以上現地に滞在することが条件となる。

採択プログラムの概要は以下の通り。

また、本プログラムは教育学研究科の国際交流支援プログラムに昨年度まで毎年採択されており、今年度も申請する予定である。留学生らJASSO奨学金の受給資格のない学生、JASSOの要件である8日間の滞在を満たせない学生にはこのプログラムから同額の支援を行う。

 

採択プログラム名

「グローバル化時代を支える大学経営プロフェッショナル育成プログラム」

概要

本プログラムは、東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策コースの専門科目「比較大学経営論」として開講される。大学院生を米国の大学に派遣し、現地の大学経営幹部、教員、専門スタッフと交流することで、グローバル化時代に対応した先進的な大学経営システムの知識修得、及び英語力向上を図っている。現代日本の大学は、グローバルな展開を図ることによってそのポテンシャルを高めることが可能となる。同時に、グローバル化と市場化の中で共通の課題を抱える海外大学と交流することで、新時代に相応しい大学経営のアイディアを交換し、プロフェッショナルとしての意識を高めることが重要である。本コースは、近年、専門職化の要請が高まっている大学管理者層やミドルマネジメント、高度な能力を持った大学内専門職の養成を使命とし、修士・博士課程で約50名の人材を受け入れ、育成を行っている。「比較大学経営論」は、2005年度のコース開設時から10年以上に渡り、毎年開講されている特色ある科目である。協定先大学において、主に、大学財務、グローバル化戦略、学生支援、研究戦略、組織運営をテーマにプログラムを実施する。プログラム構築に当たっては、現地大学の高等教育研究者に加え、大学経営幹部、教職員の協力を広く得る。長年、本プログラムを実施してきた成果として、2018年度に協定大学の教員の日本への長期招聘が実現し、またこれまで複数の教員が短期で来日し、本プログラムの内容面の充実を支援している。そうした成果により、2019年度より協定大学が2校に増えることとなった。

 

  1. 留意事項
  • パスポートを持っていない場合や期限切れになっている場合は早目に取得しておくこと。
  • 事前に必ず海外旅行保険に各自で加入し、保険の情報をコース事務室に連絡すること。クレジットカードに上乗せする保険でも可だが、すべての項目が補償されていることを確認すること。他の事前連絡事項についても履修登録後、コース事務室から連絡するので必ず提出すること。

 

現地でのエクスカーション

 

受講生の役割分担・・・事前学習会の際に決定

  • 写真撮影
  • 講義録音
  • 会食
  • 点呼・連絡・LINE管理
  • 謝礼品運搬・渡し
  • エクスカーション

 

  1. 参考資料

訪問先大学に関する基本情報について、カーネギー大学分類、および連邦教育省のIPEDSを活用すること。

https://carnegieclassifications.acenet.edu/

https://nces.ed.gov/collegenavigator/

 

アメリカの大学では日本の大学以上に大学の公式ウェブサイトが重要な情報源である。渡航前に大学のウェブサイトによく目を通しておくこと。

 

<ペンシルバニア州立大学の概要>

  • 1855年に農学校として創設
  • 1863年、州議会によってペンシルバニア州唯一のランドグラント・カレッジ(国有地付与大学)として指定を受ける
  • 1958年、研究水準の高い一部の大学のみが加盟を許されるアメリカ研究大学協会(Association of American University, AAU)に加盟
  • 研究大学の機能は、ユニバーシティ・パーク(University Park)キャンパス、大学病院・医学部があるハーシー(Hershey)キャンパスが中心
  • 研究大学へ発展する一方、州や地域社会との結びつきの中で発展
  • 州全体にわたり24キャンパスを展開する複数キャンパス・システム(Multi-Campus System):多くのキャンパスは学士課程教育(あるいはその前期課程)の提供に重点 ・・・州民へ高等教育機会を広く提供
  • 全キャンパスで授与される学位はすべて同等の質を持つとされており、「地理的に分散したひとつの大学」(One University, Geographically Dispersed)を標榜
  • 社会に対する貢献を基軸に置きつつ、研究開発活動の推進と学士課程教育を中心とする人材育成とを伝統的使命とする
  • 州立大学として独自の"State-related Universities"としての位置付け。州補助金は受け取るが、理事会は独立の存在。理事会の構成も独特(他州は知事・州議会の指名・任命によるところが多い)

 

<ペンステート理事会の歴史> ※詳しくは拙稿参照

  • 設立認可状(1855年):州知事、州長官、州農業協会、学長の4名が職権上の理事となり、9名が州内の各郡およびフィラデルフィア市から設立理事として選出(3人ずつ3つのグループに分割され、それぞれに異なる任期)
  • 職権上の理事を除き州内の各農業協会から理事を選出
  • 1875年改訂、農業協会代表に加え、卒業生と州のビジネス・工業部門の協会から理事を選出(理事数23
  • 1905年再改訂、州知事任命理事6名、卒業生代表9名、農業協会、工業協会の代表が各6名、職権上の理事が4名(理事数31、現在の構成に近似)

 

<大学ガバナンス>

・・・3つの主体間の"check & balance"による共同統治(Shared Governance

 

  • ペンステートの戦略計画(Strategic Plan

https://strategicplan.psu.edu/

  • "Facts and Rankings"

https://www.psu.edu/this-is-penn-state/facts-and-rankings/

  • Data Digest

https://datadigest.psu.edu/

  • University Park Virtual Tour

https://admissions.psu.edu/pennstate/campuses/university-park/virtualtour/

 

YouTubePenn State Campus Tourで検索すると動画がいろいろ出てきます

 

参考論文 ※Classroomにファイルをアップします

福留東土 2014 「アメリカの大学における理事会とガバナンス―ペンシルバニア州立大学の事例」『KSU高等教育研究』(3:97-111

福留東土 2018 「学士課程における専攻選択プロセスの日米比較」『大学経営政策研究』(8)19-36