授業・履修情報

2021年度シラバス

大学経営論

土曜 3限(13:00-14:45)・4限(14:55-16:40) ZOOM(場所は毎週変更)

 

担当

    講師:両角 亜希子 

 

授業の目的・ねらい

 

 大学経営論では、大学の組織、経営行動について基本的な知識を習得するとともに、その現代的な課題について各自の問題意識を発展させることを目的とする。 

 

 大学経営という分野は、理論と実践の往還がきわめて重要である。自らの経験や授業の中で取り上げる具体的な事例について分析し、議論をしつつ、既存の理論や研究からどのようなヒントが得られるのかを、それぞれに探ってもらうことが重要である。そのため、今年度は、講義のみならず、事前課題を行ったうえでの議論、ゲスト講師を迎えての議論、ケースメソッドなど、様々な方法を用いて授業を行う。積極的に参加してほしい。また、正解がひとつしかない、といったテーマでもないため、それぞれにとってのよりよい解を見つける機会になればと考えている。 

 

 

講義日程と内容

 

 以下の内容を予定している。大学経営に関するテーマは、非常に多岐にわたり、毎年、そのごく一部しか扱えないが、個人での研究を同時に進めてもらうことでそれぞれの関心にあった知見と考察を深めてもらう予定。 

 

 グループ討議以外の授業は録画して授業後に配信予定。仕事・体調不良等で結成した場合は、録画を見てリフレクションシートを提出することで出席とほぼ同等とみなす。講義の部分では画面はオフにして良いが、議論をする場合は、可能な限り、画面はオンでお願いしたい。 

 

 3限・4限の連続授業なので、適宜、休憩をはさみつつ行うが、議論の進行状況を見つつ休憩を入れるため、時間割上の休憩時間とは少しずれる可能性がある。(オンライン授業は、対面授業とは異なる疲労を感じやすいので、休憩時間は必ず十分に確保します。)

 

 

 

日にち

テーマ

1

4/10 3

ガイダンス

授業の進め方・自己紹介・簡単なイントロ

2

   4

リーダーシップ

村上雅人先生(芝浦工業大学・前学長)による講演録画を各自で見る

3

4/17 3

課題①学長のリーダーシップとは

課題②学長選考のあり方

4

   4

講義、議論

5

4/24 3

合併・連携

課題③ ケースを読み、設問への回答をまとめる

ケースメソッドによる授業

6

   4

講義、議論

7

5/1   3

ガバナンス

課題④ 文書を読み、設問への回答をまとめる

不祥事事例をもとに検討する

ゲスト講師:山本健慈先生(学校法人明浄学院(大阪観光大学)顧問、国立大学協会参与、和歌山大学顧問等)

8

   4

講義、議論

9

5/8   3

組織論

課題⑤ バーンバウムの本を読み、一つの大学を選んで、様々なモデルから説明を試みる

バーンバウムのモデルをあてはめて議論

10

      4

議論+解説

11

5/15 3

事務組織改革

課題⑥ 内容は後日連絡

東京大学の事務組織・人事改革について講義と質疑

ゲスト講師:里見朋香先生(東京大学理事)

12

      4

講義、議論

13

5/22 3

各自のテーマ

課題⑦

学生発表①

14

      4

学生発表②

 

 

課題

 

・毎週の授業では課題を課す。量が多くて大変だと思うが、教育効果を上げるためには一定のインプットや事前作業が不可欠であるため、理解と協力をお願いしたい。

・締め切りは、授業前日(金曜日)の朝10時。課題はいずれもgoogle classroomで提出すること。

・ファイル名は「課題①(名前).pdf」という形で提出すること。必ずPDFファイルで提出すること。

・なお、課題については、基本的に教員のみならず、受講生全員に共有する。同じテーマ、課題に対しても、様々な考え方や捉え方があることを実感できる。この授業は教師から学生が一方的に学ぶのではなく、多様な経験や背景を持つ学生が集まっており、学生同士が刺激し合い、学び合うことをとても大事にしている。ただし、テーマや内容によっては共有してほしくないものもあることは理解できるので、「共有不可」とファイル名と文書の最初に明記すること。

・大学勤務でない方も一定数、受講されるので、自大学や自身の経験をもとに調べたり、発表したりするというよりは、共通の事例をもとに議論するように授業を設計した。同じ事例を題材に議論をしても、それぞれの背景や経験の違いによって、捉え方や感じ方は様々であり、そのこと自体が、大学という複雑な組織を多角的に理解するうえで役立つと考える。

 

 

・各課題についての詳細は以下の通り。

 

課題① 村上雅人先生(芝浦工業大学・前学長)による講演録画「学長から見たIR」(20209月に実施した学長セミナー http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/news/20202.html の基調講演録画)を見て、「学長のリーダーシップ」について、どのように考えたのか、あなたの考えをまとめてください。

より詳しく知りたい方は下記の書籍を合わせて読んでもよいかもしれません。

村上雅人2021『教職協働による大学改革の軌跡』東信堂 

 

課題② リーダーがどのように役割を発揮できるのかは、リーダーがどのように選出されるのかにも大きく関わっています。ここでは東京大学の事例をもとに検討します。昨年の総長選挙で様々な課題が指摘されました。「令和2年度総長選考会議における総長の選考過程の検証報告書」(https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400151000.pdf)を読んだ上で、(1)何が課題だったのか、(2)どのような選考過程に改革していくことが望ましいのか、あなたの考えを書いてください。  

 

課題③ ケース(来週配布)を読んで、設問に対するあなたの考えを書いてください。1週間前の授業時に詳細をお知らせするので、今しばらくお待ちください。 

 

課題④ ガバナンス改革の議論が起こる一つの大きなきっかけは不祥事です。特に私立大学では、どのようにしたら不祥事を防げるのか、といった観点から私学法の改正が何度も行われてきました。ここでは学校法人明浄学院(大阪観光大学)の事例をもとに検討します。「学校法人明浄学院 第三者報告書」(https://www.meijo.ac.jp/news/corp/648/)、および大阪観光大学の以下のウェブサイト読んだうえで、以下の3つの設問について、あなたの考えを書いてください。 

 

大阪観光大学中期計画(初版) ~ 大阪観光大学 9つの約束

 

ttps://www.tourism.ac.jp/news/cat1/8196.html

大阪観光大学 教職員の目標と行動指針

ttps://www.tourism.ac.jp/news/cat1/8192.html 

 

1)なぜ不祥事は起きたのか、(2)どのようにすれば不祥事は防げたのか、私立学校法の改正は必要か、必要ならどう変更したらよいか、(3)もしあなたなら(職員の立場でも、経営者の立場でもよい)この法人をどのように立て直していくか。

 

授業では現在この法人の再建に関わっている山本健慈先生をお招きして、共に議論します。 

 

課題⑤ ロバート・バーンバウム1992『大学経営とリーダーシップ』(玉川大学出版部)を読んだうえで、バーンバウムの大学組織モデルを自分の良く知る大学組織に当てはめて解釈してみる。この本の中ではいくつかの組織モデルの考え方を説明しているが、一つのモデルがよくあてはまると考えれば、それについて根拠を述べつつ論じてもよいし、事象や立場によって異なるモデルから説明がしやすいと考えれば、複数のモデルから論じてもよい。

 

(注意!)

大学経営、大学組織について学ぶ上で、基本的な文献で必ず読んでおいてほしい良書なので、このような課題をほぼ毎年出しているが、本を1冊読むという課題でもあるので、早めに(遅くとも連休中)計画的に取り組むこと。前日の付け焼刃では到底、対応できません。 

 

課題⑥ 東京大学の里見理事に、東京大学の事務組織・人事改革について講演をしてもらい、そのあとに質疑をするために必要な事前課題を出す予定。詳細は後日、案内します。 

 

課題⑦ 大学経営に関して(ご自身の研究テーマを考え、深める機会として、広めに捉えていただいてOK)、あなたが知りたい、深めたいと思うテーマについて、論文・書籍・報告書などを読んで/あるいは具体的な事例を分析して、その内容を発表してください。どのようなテーマを扱えばよいか、どのように進めたらよいかは、個別に相談に乗るので、相談を希望する場合は、4月中にはご連絡ください。 

 

リフレクションシート(RF)

 

・毎週の授業後、翌日中に(日曜日2359)、授業の感想、質問を書いて提出すること。A4 1枚程度でよい。

・リフレクションシート(+両角からのフィードバック)も基本的に受講学生の間で共有する。内容によって共有してほしくない場合は、「共有不可」とファイル名および文書の最初に明記すること。

・ファイル名は「日付RF(名前).pdf」という形で提出すること。必ずPDFで提出。たとえば、4/10 RF両角.pdf(共有してほしくない場合は、【共有不可】4/10 RF両角.pdf)といった感じで。

 

 

最終レポート

 

・課題⑦に関する内容を、文章化する。分量は特に定めない。

・(1)どのようなことに関心があり、(2)どのような知識を学び/どのような事例を実際に検討してみて、(3)そこから何を考え、学んだのか、という観点を必ず入れてください。

・締め切りは、531日。

 

 

成績評価

 

・課題をすべて提出した場合は、70 (良以上)は保証します。(やむを得ず欠席される場

合は、担当講師までメールでお送りください。) これだけの課題をこなせば、一定の知識を身につけ、見識を深められると考えているからです。

・それ以上の成績を付けるかどうかについては、提出物や発表内容の質、授業中の発言で

の貢献、最終レポート、リフレクションシートなどを総合的に考慮したうえで決定します。リフレクションシートについては、マイナスの成績評価に用いませんので安心して率直なご意見をお書きください。良いコメントを書いて、授業に貢献してくれた場合、プラスの評価にのみ用いることがあります。

 

 

参考文献

 

毎回の講義の際に指示する。 

 

授業では扱いきれませんが、以下の書籍は大学経営について理解する上での基本文献だと思います(もちろん他にも多数の文献はありますが)。ご自身の関心のある所だけでも読むとよいです。 

 

東京大学 大学経営・政策コース2018『大学経営・政策入門』東信堂 

中島英博2019『大学教職員のための大学組織論入門』ナカニシヤ出版

両角亜希子編著『学長リーダーシップの条件』東信堂

小方直幸編著『大学マネジメント論』放送大学教育振興会

両角亜希子2020『日本の大学経営-自律的・協働的改革をめざして』東信堂 

 

また、高等教育に関しては、以下のような学会誌・学術誌があります。

 

『高等教育研究』『大学教育学会誌』『大学行政管理学会誌』『大学論集』等 

 

また、様々な情報や事例は、たとえば下記の雑誌で見ることができます。定期的に内容をチェックして読む癖をつけるとよいかと思います。

 

リクルート『カレッジマネジメント』(WEBで閲覧可能) 

進研アド『Between』(WEBで閲覧可能)

私学経営研究会『私学経営』

国立大学マネジメント研究会『大学マネジメント』

I DE大学協会『現代の高等教育』

日本私立大学連盟『大学時報』

大学基準協会『大学評価研究』『大学職員論叢』

ジアース教育新社『文部科学教育通信』等

 

 

履修上の留意点 

・履修者自身による事前作業等はそれなりに多いです。十分な準備をすることで、学習効果が高まるので、それをよく理解し、準備したうえで、積極的に授業に参加してください。 

 

・グループや全体での議論、ケースディスカッションなど、討議を通じた学びが多いタイプの授業です。よりよい学習の場を作るのは、教員だけでなく、受講者自身です。そのため、以下の4つの約束を守ってください。受講者全員が約束を守ることで、信頼関係が構築され、安心して発言がしやすい環境が作られます。そして、それが高質で満足度の高い議論につながることを理解してほしいと思います。

 

 当コース以外からも履修する学生がいる場合は、この授業の自己紹介シートを全員で作って共有する予定ですので、その場合もご協力をお願いします。 

 

    自分の考えを大勢の人に向けて発するには勇気がいりますが、ぜひ勇気をもって発言してください。また、建設的な反論も真の学習に欠かせないので、対立意見を言うのも避けないでください。 

    履修者同士が互いに協力し、他のメンバーに対して、礼儀や敬愛の精神で接してください。それがあれば、たいていは「話してよかった」という結果になります。

    自分の立場や考え方とは異なるものも受け入れる姿勢・態度(寛容の精神)を持って、議論してください。

    授業の中では、勤務先大学について話したりすることが多くなりますが、この場で得た情報を他で漏らさないようにお願いします。